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里山

うさぎ追いし かの山 小鮒釣りし かの川

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夢はいまも めぐりて 忘れがたき 故郷

 

日本において広く親しまれている唱歌「ふるさと」にうたわれている風景は、人のいる自然、「里山」を想起させます。里山と呼ばれる日本の農村の生態系は、何世紀にもわたり人間と自然が共存してきた場所として、日本人の心のよりどころでもありました。里山には、木々や昆虫、動物がいるだけでなく、水田や雑木林、小規模な畑、ため池、鎮守の杜などがあります。国土の大半が森におおわれた日本では、自然と調和した生活を送ることが大切であり、必要でもあったのです。

 

里山においては、地域の生態系に基づいた農法や資源管理が行われ多角的な土地利用が実践されていました。里山は、「人のいる自然」として、人の手が入らない自然と人間社会の間の緩衝地帯としても機能していたのです。また、地域管理組織によって里山が共同管理されることで、ローカルな伝統的知識や文化が守られていました。

 

しかし、日本の高度経済成長期に、里山にも大きな変革が訪れます。里山は、農地に必要な肥料、農家用の薪炭や木材などの供給源としても利用されていましたが、1960年代の燃料革命・肥料革命により、社会経済的な理由から、大規模開発の対象となりました。こうして里山における伝統的な人間・自然関係が崩壊し、管理不十分となった里山は放棄林となりました。放棄林では、松枯れ病によるマツの集団枯死や竹林の拡大が起こり、人による長期的な影響によって形成・維持されてきた特有の景観と生物群が保全されなくなるという問題も起こりました。

 

こうした経緯を経て、自然共生社会のモデルとして里山の概念が見直され、環境省と国連大学高等研究所(UNU-IAS)はSATOYAMAイニシアティブを提唱、2010年10月の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に際しSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップを発足させました。

 

里山において提供される生態系サービスを再評価し、人間と自然の関係を現代社会に再構築することが求められている今日、SATOYAMAイニシアティブは、生物多様性条約(CBD)の目標の中でも「生物多様性の保存」と「生物多様性の持続可能な利用」に特に有効であると期待されています。

 

こころざしを はたして いつの日にか 帰らん
山はあおき 故郷  水は清き 故郷

(故郷 (ふるさと)  高野辰之 作詞)      

                                                                                                     

                                                                                                                            (谷本理恵子)

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