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落葉樹

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秋も深まってくると、葉を黄色や朱色に染め、やがて風に舞いながら葉を散らす木。落葉樹とは、低温や乾燥が続くなど生育に適さない期間になるとすべての葉を落として休眠に入り、生育期になると再び葉を出す樹木のことです。春に芽吹き、夏には葉を茂らせて緑陰をもたらし、冬は葉を落として暖かな陽射しを通します。この落葉樹の特性は、森林生態系において重要な役割を担っています。

 

森林には、木や草花、昆虫、コケ、微生物、鳥や動物など多くの生き物が共存し、それらは食物連鎖の関係で繋がっています。つまり、地面に落ちた葉や枝はさまざまな微生物によって分解されて腐葉土になり、それが再び植物の栄養素となって循環します。こうした生物多様性のしくみによって、森林は森林として持続することが可能なのです。

 

日本で見られる温帯性の落葉樹林の代表はブナの木を中心としたブナ林で、四季折々の表情が美しい森林です。しかし、日本の森林は、人間の生活範囲に近いため、いわゆる原生林といわれる場所は数えるほどしか残っていないようです。それでも、青森県と秋田県の境に位置する白神山地は、人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が、世界最大級の規模で分布している貴重な地域であることから、1993年に日本で初めてユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録され、悠久の大自然の姿を保っています。

 

地球温暖化、資源の浪費・枯渇、地域における景観や生態系の消失など、現在起きているさまざまな環境問題に対し、地球環境を保護する観点から、近年、自治体や公団・公社、民間企業による「環境共生住宅」の推進活動が活発化しています。それは、太陽や風、水、緑などの自然の恩恵を授受し、それらを効果的・持続的に得られる住まいと環境を整えるという取り組みです。例えば、その方法の一つとして、家の南側に落葉樹を、北側に常緑樹を計画的に植えます。すると暑い夏は、落葉樹の茂った葉が太陽の熱を柔らかく遮り、木陰をつくってさわやかな風を呼び込みます。そして、寒い冬は葉を落とした樹形の間から、ぽかぽかとした暖かい陽射しが部屋の奥の方まで届き、北側の常緑樹が北風を和らげる効果があるようです。これは、自然の営みがもたらす自然エネルギーを利用して、暮らしのエネルギーを節約することに繋がっていくというわけです。

 

落葉樹は古くから住宅の庭木に多く使われ、毎年きれいな花を咲かせるもの、実のなるもの、葉の形状が個性的なものなど種類も豊富で、中でもヤマボウシ、ヒメシャラ、ハナミズキ、モミジのような樹形が柔らかく姿の美しい木は、観賞価値も高く、暮らしに四季の移ろいを告げてくれる植物として好まれているようです。

 

                                                                                    (干場由利)

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