English

リレーコラム

グリーン・ウェイブ・イニシアティブ:

(1) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

ジャン・ルミール
生物学者 映画製作者 探検家

ミッション「1000 Days for the Planet(1000日航海プロジェクト)」の一環として、ハワイ北西部パパハナウモクアケア海洋国家遺産の一部であるミッドウェー環礁を訪れる機会がありました。そこでは数百組のコアホウドリのつがいが6.2 km2の小さな島に巣を作っています。コアホウドリの親鳥は、幼鳥を育てるため、沖合まで餌を探しに行きます。通常、このあたりにはイカが多く生息していますが、残念なことに、親鳥は海上に浮かんでいるものを餌と見誤って持ち帰ってしまうことが多いのです。その結果、幼鳥は、ライター、ゴルフボール、おもちゃ、歯ブラシなど様々なプラスチック製品を「与えられて」しまい、コアホウドリの生長が脅かされています。こうしたパッチ上に浮かぶ海のゴミ問題は実に残念なことといわねばなりません。しかし私はこの悩ましい経験を通して、地球の素晴らしい生物多様性を守ることがどれほど重要であるかについて訴えるため、若者たちの意識向上に、迅速に、そしてますます積極的に取り組んでいかねばならないという思いを強くしました。それでも、この問題の解決法はシンプルなものです。ゴミを適正に管理し、リサイクルすることがその答えです。私たちはあらゆる形態で生命を守り尊重していくことができます。そして、ゴミの適正管理とリサイクルがその方法のひとつなのです。

(2) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

ジャン・シッパー
保全生物学者、野生生物生態学者、ProCATインターナショナル所長

私がシェラ海洋研究所(the Sierra to Sea Institute)のメンバー、1000 Days for the Planet(地球のための1000日間)のプロジェクト・チームとともに、コスタリカの内陸部と海洋を訪れた際、そこに棲息する捕食動物について非常に興味深い事実が明らかになりました。最上位捕食者は通常、保全のためのアンブレラ種*か、象徴種**と考えられており、こうした生物が豊富に存在していることが環境状況を評価する目安として用いられています。森林・沿岸部の環境状況に関する問題は深刻化し、タラマンカ山脈 太平洋側斜面は農地へと転換されつつあり(最近ではアフリカの油椰子プランテーションが進出)、保護地域は外部からの様々な影響を受けています。今日、この地域を上空から観測すれば、森林はパッチワーク状にしか残っておらず、川は茶色く、放置された大量の浚渫土があり、汚染が海にまで及んでいることがすぐにわかります。残念なことではありますが、我々のプロジェクトによって、環境が大変なストレスを受けていることが確認されました。ジャガーの個体数はいったん増えていましたが近年の密漁によって激減しました。また水質の悪化と乱獲により、アカシュモクザメの個体数も同様のストレスを受けているようです。こうした捕食者を効果的に保護するためには、様々な保護地域間の連結性を維持するだけでなく、こうした種や生態学的サービスを保護する既存の環境法(密漁、乱獲についてのもの)を改善し施行することが必要だと認識しています。そうした努力が、環境や人間を守ることにつながるからです。

 

*アンブレラ種とはその地域における生態系ピラミッド構造、食物連鎖の頂点の消費者である。アンブレラ種を保護することにより、生態系ピラミッドの下位にある動植物や広い面積の生物多様性・生態系を、傘を広げるように保護できることに由来する。

** 象徴種とは、地域の環境保護を促進するための象徴として置かれる生物種のこと。

(3) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

ホセ・F・ゴンザレス=マヤ
シェラ海洋研究所サイエンス・ディレクター、ProCATコロンビア/インターナショナル所長

私は仕事の一環としてラテンアメリカで保全活動に従事していますが、こうした活動においては地域の人々との協働が必要であると常々思ってきました。つまるところ保全とは、生態学・生物学といった科学のバックグラウンドを持つ社会科学に他ならないからです。 コロンビアのシェラネバダ・デ・サンタ・マルタ国立公園や、コスタリカのタラマンカ山脈といった生物多様性のキー・エリアにおけるフィールド・ワークでは、常に社会研究とアウトリーチを取り入れてきました。 素晴らしいカエルや見事なジャガーを探しに山に入るたびに、行動、状況、そして私たちの愛する熱帯林の未来を形成する人間の存在がいかに重要なものであるかということを認識させられます。 少しでも野生生物について学べば、密猟や森林破壊が野生生物の数を減少させていることがわかります。また生物多様性の未来は若者の手に委ねられているのだとも認識しています。 生物多様性の保全と持続可能な利用を行うことが、国家社会のタスクであることは明らかですが(少なくともそうあるべきです)、子供たちこそ、汚れのない心で豊かな生物多様性を維持していけるのだということが今はっきりとわかります。 森の与えてくれるものを子供たちが享受したいなら、野生のジャガーを観察することです。私はこれまで、ProCATインターナショナルとシェラ海洋研究所(the Sierra to Sea Institute)の共同プロジェクトの一環として、野生生物や生態学についての知識を子供たちに教え、保全に対する意識を向上させるための活動を続けてきました。人間とは生来、野生生物や自然を大切にするものではありますが、私はさらなるアウトリーチや情報の提供が必要だと感じています。自然を利用するという観点からだけでは、子供たちは心のありようを変えることができませんが、私たちが自然の一部であり自然に依存しているのだということを認識し、自然はなぜ重要なのかということを説明するツールや知識を手にすることができれば、驚くべきことに、小さな子供たちがコミュニティ全体を変えることすら可能になるのです。

(4) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

永石安明
オイスカ・インターナショナル事務局長

オイスカでは「子供の森」計画の活動として2009年からグリーンウェイブに取り組み、これまで世界18カ国、2万4千人が参加して参りました。こうした活動を実施する際、我々はその活動と意識をいかに現地に浸透させるかという点に重きを置いています。

例えば、森林破壊が深刻なフィリピンのヌエバビスカヤ州では、20年以上に渡り500ha以上のはげ山に植林をしましたが、開始当初は早急な環境保全のため、育成の早い現地種ではない樹木を植えました。しかし、その後の調査で、植林をした木々の間から、鳥類等を介し、現地種の樹木が自生していることを確認しました。植樹により生態系が徐々に回復し、多様性が生まれたのです。また同時に、かつて植樹に関わった子どもたちが、親となり自分の子どもへとその活動の心を伝え、再び活動に参加する姿をみて、子どもたちへの環境教育こそが、地域を巻き込んだ持続可能な環境保全に不可欠だと痛感しました。子どもが関わることで、親が関心を持ち、その意識が地域に浸透していく。次の100年を担う子どもたちに、草の根レベルで環境への意識を高めていくことが、一過性でないプロジェクトの実現につながると考えます。

今後も、グリーンウェイブと連動し、環境教育を基盤に置いた活動を広げていくことで、我々が目指す、現代から次世代へつながる“ふるさとづくり”を進めていきたいと思います。
 

(5) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

 

僕は2012年の春に、日本の東北地方で実施されたオイスカとイオン共催のグリーンウェイブに参加しました。
 

その活動で日本 の森を訪れたとき、自然と人間がどのように強くつながりを持っていたかを学びました。また、日本人は昔から自然と上手に共生してきたことを知りました。森はとてもよく手入れがされていて、見たことのない種類の植物がたくさんありました。一方僕のふるさとであるインドでは、毎年多くの動植物が絶滅しています。 生物多様性を守らないといけないと強く思いました。


今回の体験を通じて学んだことは、自然の力は人間の想像を超えているということ、偉大で美しいけれども、時には破壊的な力を持っていること。多くの国で自然資源の過剰使用、そして大規模な森林伐採が行われ、自然のバランスが崩れてきていま す。すべてのことには限界がありそれを超えてしまってはいけないと学びました。自然のバランスを崩さずに自然との“絆”を大切にしないといけないと思います。


自然との調和や他の国々の環境問題を学び、これからは僕の“ふるさと”のために頑張りたいと感じました。その“ふるさと”は僕の町や国だけではなく、僕たちの母なる地球を守るために行動していきたいと思います。

(6) グリーン・ウェイブで訪れた国で印象的だったこと

アデ・ラスタンディ
第一パルングクダ高校 生物教師  (インドネシア西ジャワ州スカブミ県)

私は2010年にオイスカのプロジェクトの一つである「子供の森」計画(以下CFP)の活動の一環として2010年からグリーンウェイブに参加しています。私たちのCFPコーディネーターに、「このグリーンウェイブは地球上の生物多様性を保全し再生を助ける取組みです。」と言われました。このことを聞いて、私は生物の教師として教室の中だけではなく、私の学びの源である地球に対しても貢献できると感じました。そこで、私は学校の同僚の教師や校長、生徒たちに一緒にグリーンウェイブに参加しようと呼びかけました。最初の活動では、私たちは西ジャワの郷土樹種と言われているマエソプシス・エミニーという木を植えました。翌年の2011年にはスカブミ県の郷土樹種であるカヤの木を植え、さらに2012年と2013年には西ジャワの固有の様々な木々を植えました。

これらの活動で、私たちの学校は活動以前には知らなかった私たちの郷土固有樹種を集めることができ、また教師としても大変よい勉強と経験を積むこともできました。生徒たちは地球のために貢献できただけではなく、とても貴重で実践的な学びを得ることができました。これは教室の中での授業では決して成し得ないことです。

グリーンウェイブの活動は教育的にも自然環境に対しても大変有意義な新しいことを経験させてくれます。私たちはグリーンウェイブに参加することによって、特にインドネシアの植物の生物多様性を守ることができました。この活動は、地球上の生物多様性を維持していく最も良い方法の一つだと思います。

(7) グリーン・ウェイブへのご招待

ニール・プラット
生物多様性条約事務局(CBD Secretariat) 環境問題上席オフィサー

グリーン・ウェイブは、子供たちとユース、その両親、先生、そして友人たちを対象として、生物多様性についての学びとその保護活動の実施を支援する世界規模のプロジェクトです。このプロジェクトには、2008年以降、70ヶ国以上から6000を超えるグループと学校が参加してきました。

 

5月22日の国際生物多様性の日を記念し、この日の現地時間午前10時に、学校や様々なグループの若者が、学校の近くに1本の木を植えたり、生物多様性を保護する活動に参加したり、生物多様性について学んだりします。こうした活動を実施することによって、時差を超えたグリーン・ウェイブがつくられるのです。

 

また参加者が、現地時間の20時20分に、活動に関する写真や報告をオンライン・マップ上にある「グリーン・ウェイブ」のウェブサイトにアップすることで、国境を超えたバーチャルなグリーン・ウェイブがつくられます。

 

1本の木を植え育てていくというグリーン・ウェイブのプロセスとは、土壌や樹皮、枝、果実や葉の中に生息する生物の「ホスト(宿主)」を支えていくことなのです。また今日の子ども達、すなわち明日の市民にとっては、都市部に生活する機会がますます増えていますが、グリーン・ウェイブの活動は、そうした子供たちに対し自然に触れ学ぶというシンプルな方法を提供するものになっています。

 

さらに生物多様性条約事務局では、グリーン・ウェイブの参加者に対し、環境プロジェクトの実施、年間を通して生物多様性に親しむこと、またそうした活動の経験を様々な人々と分かち合うことについて、支援を行っています。

 

グリーン・ウェイブの創設後まもなく、国際連合の潘 基文(パン・ギムン)事務総長は次のように述べています。「私は学生、両親、教師のみなさんに、「グリーン・ウェイブ」という波に乗り、この言葉を世界に広げていってほしいと思っています。小さな貢献であっても、大きな変革をもたらすことができます。私たちが人類と地球を健全なものとしたいならば、地球の生物多様性を守ることは極めて重要なことなのです。」

 

パン事務総長の言葉に賛同し、グリーン・ウェイブを作るひとりとなってください!ウェブサイト、フェイスブックで活動を紹介しておりますのでぜひご覧ください。

Website: http://greenwave.cbd.int/en/home

Facebook: https://www.facebook.com/greenwave.cbd.int

English