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Q&A Biodiversity and Us

秋はジビエの季節

秋は、栗、松茸、柿など、いろいろなものが美味しい季節です。また秋は狩猟の季節でもあります。日本では10~11月から2~3月まで狩猟が解禁され、ジビエのシーズンが始まります。ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきました。シカやイノシシ、ウサギ、カモなどは日本でも昔から食べられてはいましたが、その消費はいったん下火になりました。しかし近年、日本でも増えすぎたシカ等をジビエ食材として活用していこうという活動がすすめられています。ジビエの季節である秋に、もっとジビエについて知ってみませんか。

ジビエのひとつであるシカ肉の活用について活動を続けてこられたエゾシカ協会の松浦様に教えていただきました。

回答者:松浦友紀子
一般社団法人エゾシカ協会 理事
国立研究開発法人森林総合研究所 北海道支所 主任研究員

Q1

ジビエ食材のひとつ、鹿肉の普及状況について教えてください。

A

ヨーロッパでは狩猟期の旬の食材として広く利用されています。イギリスにはニホンジカを含む6種のシカがいますが、その中でもニホンジカの肉はとくに人気が高いと言われています。イギリスでも、かつては今の日本同様、あまりシカ肉は一般的な食材ではなかったそうですが、有名なシェフ達がシカ肉をアピールする取り組みを続けた結果、現在の様にシカ肉が広く認知されるようになったそうです。当協会では、まずは子供たちに美味しさを知ってもらえるように、出前授業でシカのしゃぶしゃぶなどを味わってもらっています。先入観の無い子供たちは、シカ肉が大好き!

Q2

ではシカ肉は、どうして日本でもジビエ食材に使われるようになったのですか?

A

日本にも昔は獣肉専門店があったくらい、シカやイノシシの肉は食べられていました。でも長い禁猟期間に、日本人にとってこれらの肉はなじみのない肉になってしまいました。しかし近年、全国的にシカやイノシシが増えすぎて、農林業被害や交通事故など人との軋轢が大きくなりました。さらに、樹の皮や芽を食べるため、森林が更新できなくなり土砂流出が起こるなど、森林生態系のバランスも崩れてしまっています。そのため、現在は多くのシカが捕獲されています。もともと資源として活用されてきたシカなので、使わなくてはもったいない!そこで、捕獲した個体を肉として活用する取り組みが進められるようになりました。

Q3

でも、動物を殺すのは残酷なことではないでしょうか?

A

増えすぎたシカは、人だけではなく、森林、またシカ自身にとっても悪影響があります。シカの数が多すぎると、餌不足により身体が小さくなったり、繁殖力が低下したりします。「増えすぎたら自然に死亡して、シカ自身で数をコントロールするのでは」と思う方もいるかもしれませんが、シカが自然に死ぬ状況になる前に、シカに食べつくされて森林は丸裸になるでしょう。そのため、生態系のバランスを取り戻すためには、人がシカの数を適正にコントロールしないとなりません。ただし、シカは大切な資源ですから、ただ殺すだけではなく、肉や角、皮など、できるだけ活用することが重要です。

Q4

野生鳥獣のお肉は食べても安全なのですか?

A

野生鳥獣は、家畜と異なり管理飼育されていないので、人も罹る病気を持っている可能性があります。しかし、ニホンジカの場合、今のところ重篤な感染症は確認されていません。シカ肉を食べる時に注意すべきは、どの動物も持っている一般的な食中毒菌です。この食中毒菌が肉につかないような解体処理をする必要があります。まず、シカ肉利用を促進するにあたり、シカ肉の安全性を高める必要があったことから、当協会では平成19年にシカ肉の認証制度をスタートさせました。この認証では、厳しい衛生基準をクリアしている食肉処理場の製品を認証し、認証マークの使用を認めています。これにより、安心安全なシカ肉が客観的に判断できることになり、大手企業がシカ肉の取り扱いを始めるなど、シカ肉の流通促進に寄与しています。

松浦先生、どうもありがとうございました。

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