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歴代受賞者

2012年 The MIDORI Prize for Biodiversity 受賞者

ロドリゴ・ガメス=ロボ

ロドリゴ・ガメス=ロボ
コスタリカ
コスタリカ生物多様性研究所(インビオ) 代表

受賞のことば

1989年、コスタリカにおいて、熱意あふれる生物学者と自然保護論者の小さなグループは、ある冒険への道を歩むべく、自ら決意しました。「生物多様性を確実に保全し 人間の生活の質を改善する手段としての 生物多様性の価値について、認識を大いに向上させる」という意欲的な使命をおびた 国立生物多様性研究所、インビオの設立です。

生物多様性を保全する最善の方法とは、賢明な方法で、精神的・知的・経済的な目標のために「生物多様性を知り」、持続可能に「利用することだ」という前提に基づいて、インビオは、政府による野生保全地域の国家システム創出という、まず第一に必要とされる「保全」の段階から活動を始めました。「保全し」「知り」「利用する」というコスタリカの保全戦略三部作はこうして誕生しました。

23年後、コスタリカ政府の持続的な政治的支持、科学コミュニティの知見協力、先見の明を有される先進国政府の財政支援を受けて、夢は現実のものとなりました。インビオは、知見、持続可能な利用、国が有する生物学的財産の価値に対する認識向上に関し、具体的で堅実な貢献を果たしてきました。

The MIDORI Prizeが、インビオを主導するという興奮に満ちた冒険において、近年私が果たさせていただいたこの恵まれた役割を顕彰して下さるものであるならば、この機会をお借りして、公益財団法人イオン環境財団、生物多様性条約事務局、The MIDORI Prize審査委員会、ならびにノミネーターの皆様に謹んでお礼を申し上げたいと思います。

認識すべきこととは、自然と共に平和を追及するという人間の努力に他ならないのです。

授賞理由

ロドリゴ・ガメス=ロボ博士は、ブラジル リオ・デ・ジャネイロでの「地球サミット」に先立つ1991年に、ダニエル・ジャンセン博士と共に生物多様性インベントリー作成のインビオを設立。パラタクソノミスト(分類補助員)を育てコスタリカの生物多様性インベントリー作成に多大な貢献を果たし、あわせて生物多様性を学校教育のカリキュラムに導入するべく尽力した。設立以来、インビオを主導し、生物多様性を独創的かつ具体的に示した博士の功績は高く評価されている。
また、メガダイバーシティの国であるコスタリカの国土の25%を国立公園にすることを働きかけ、コスタリカに農業収入よりも価値の高いエコツーリズムによる収入をもたらした。こうした活動は、開発と生物多様性の保全のバランスの問題を抱える熱帯諸国において生物多様性の保全と利用に関する先導的な役割を果たしている。科学的見地に基づき行政とともに博士が継続的な取り組みを実践してきたことにより、生物多様性はコスタリカの国家アジェンダとなった。
さらに博士が、世界分類学イニシアティブ、アクセスと利益配分といった生物多様性条約の主要テーマに貢献してきたことも高く評価された。

プロフィール

ロドリゴ・ガメス=ロボ博士(1936年生まれ)は、1966年、イリノイ大学で植物ウィルス学の博士号を取得。1958年から1990年までコスタリカ大学教授として、同大学の植物科学校所長、研究部門副学長、細胞分子生物学研究センター所長等を歴任した。中央アメリカにおける農作物のウィルス、虫による植物ウィルスの媒介、ウィルスの分子特性化などを専門分野としている。また、コスタリカ研究評議会、熱帯研究機関、アメリカ植物病理学会カリブ海部門など国内外で数多くの委員を務め、現在は、コスタリカ科学アカデミーの委員として国内の教育や、持続可能な開発に関わる業務に携わっている。

ガメス博士は、オスカー・アリアス大統領の生物多様性顧問(1986~1990年)として、コスタリカの自然資源省(現在の環境省)内に保護地域のための国家システムを設立し、政策の立案にも大きく寄与した。また、インビオを創設するとともに同研究所の所長に就任し(1989~2003年)、創設時から現在に至るまで同研究所委員会の代表を務めている。インビオは、生物多様性に関する情報の作成、管理、発信を行う主導的な機関として成長し、生物多様性に関する研究所の世界的なモデルとなった。コスタリカ環境省と緊密に連携・協力しながら、インビオはコスタリカの生物多様性インベントリー作成、情報整理・処理、国内外への情報の提供を行っている。その活動分野は、インベントリー作成・モニタリング、教育・バイオリテラシー、生物資源調査、政策・法規制、土地利用管理・技術支援、能力開発など多岐にわたり、数々の国内賞、国際賞を受賞するなど高く評価されている。

また、ガメス博士は、生物多様性の保全に関わる様々な国内・国際イニシアティブに携わり、世界資源研究所(WRI), 国際自然保護連合(IUCN), 国連環境計画(UNEP)により1992年に取りまとめられた「生物多様性戦略」の作成にも大きく寄与した。さらに、コスタリカ政府代表として、生物多様性条約の作成において主導的な役割を果たし、UNEPの生物多様性関連の顧問委員会委員として活動し、コスタリカ環境省生物多様性研究諮問委員会のコーディネーションにも携わっている(1994-1998年)。この諮問委員会は、コスタリカ生物多様性法の制定と生物多様性国家戦略の策定において、根幹となる役割を果たした。ガメス博士は、著作・講演活動を通じて、生物多様性の保全と持続可能な開発に関し、コスタリカがパイオニアとして多大な貢献をしてきたことを広く世界に発信した。

※ このプロフィールは2012年に作成されたものです。

主な受賞歴等

1983年
Bernardo Houssei賞 科学部門
1992年
ピーター・スコット卿賞(IUCN種の保存委員会、インビオとして受賞)
バネスト栄誉賞(スペイン、バネスト文化財団)
1995年
スペイン・アストゥリアス皇太子賞科学・技術部門(インビオとして受賞)
1997年
栄誉メダル賞(宇宙探検家協会)
2004年
緑の地球賞(米国 NGOレインフォレスト・アライアンス)
優秀科学者賞(コスタリカ科学技術省)
2007年
名誉博士号(熱帯農業研究・教育センター)
2010年
名誉教授(コスタリカ大学)
2011年
マゴン賞(コスタリカ政府文化・青年・スポーツ省)

主要論文・著作リスト

関連ウェブサイト

ガメス=ロボ博士 バイオグラフィー

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