English

歴代受賞者

2014年 The MIDORI Prize for Biodiversity 受賞者

アルフレッド・オテング=イエボア

アルフレッド・オテング=イエボア
ガーナ
ガーナ生物多様性委員会 議長

受賞のことば

私は生涯をかけ、神が地球上に創られた世界に自身の情熱を注いでまいりました。神は目的をもって世界を創られたのだと私は考えています。そして、人間の生命、その存在と福利を可能にすることこそ、神が私達に与えられた目的であると理解しています。

私は、生物多様性(神が創られた世界を構成する生命)と、非生命体とは、互いに関連のあるものだと考えています。また私は、生物多様性とは、いわば「生命保険*」なのだという見解に同意しています。よって私は、開発下にあっても環境の安定性と社会経済的な一体性とを与えてくれる生態系サービスや、生物多様性のあらゆる側面について話し合うため、地方、国家、世界レベルで開催された様々な会議や協定に関わって参りました。専門家の意見を拝聴し、同僚と意見を交え、具体的な議論を行い、和解に努めることで、家庭・コミュニティ・国家・世界という様々な段階において、生物多様性の保全と持続可能な利用を最重要のものと考える、そうした合意を形成して参りました。

*2005 年の国際生物多様性の日に発表された、同年の生物多様性のテーマ「 生物多様性:変化する世界での「生命保険」(Biodiversity: Life Insurance for our Changing World)」に基づく。

この度、The MIDORI Prize for Biodiversity 2014を受賞する機会を私に与えていただきましたことを誇りに思っております。この度の受賞によって、私は人生の岐路に立ったのだといえるでしょう。この岐路に立つことで、私の人生には新たな局面が開かれます。私は本賞によって、さらなるインスピレーションの源泉へと駆り立てられ、また同時に、生物多様性の推進という課題に立ち向かわせていただけるものと思っております。

The MIDORI Prize for Biodiversityは、世界的には比較的新しい賞でありながら、既に政府の政策策定の最高レベルで生物多様性という課題を牽引しています。この賞の受賞者に私をお選び下さったイオン環境財団に心からの敬意を表します。また、The MIDORI Prizeによって国際的な舞台に立たせていただいた私の故国ガーナと、顕彰の場を与えていただいたアフリカに、本賞を捧げたいと思います。

授賞理由

アルフレッド・オテング=イエボア博士(1946年生まれ)は、アフリカを代表する生物多様性の指導者。生物多様性条約科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)議長など国際機関の要職を歴任、グローバルな見地から生物多様性に関する国際交渉等をリードし、世界的な影響を与えてきた。特に、科学と政策の対話の重要性を提唱し、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の設立、運営に大きく貢献してきた。

オテング=イエボア博士は、生物多様性の保全と持続可能な利用を行う上で特に重要な会議におけるガーナとアフリカの代表として、長きにわたってその役割を果たしてきた。博士が生物多様性条約や、生物多様性関連の他のプロセスに果たした貢献は、非常に大きく、意義深い。SBSTTA第9回及び第10回議長を務めたほか、森林、海洋、保護地域、能力開発など様々なグループ会議の議長等を歴任、ワシントン条約(CITES)やボン条約(CMS)、ミレニアム生態系評価(MA)、地球環境ファシリティ(GEF)等にも参画した。また、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の運営委員会議長も務めるなど生物多様性に関して長年にわたり広範に貢献している。

また、特筆すべき貢献として、科学と政策の対話の促進を挙げることができる。博士は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の構想以前から、科学と政策の対話の重要性とそのためのインターフェイスの確立を提唱し、IPBES設置の準備会合で共同議長を務めてIPBESの正式な設置に向けた各国の意見の集約に主導的な役割を果たした。

生物多様性と生態系サービスに関する科学と政策のインターフェイスの確立を目指す世界的な議論のプロセスにおいて、博士の残した功績は高く評価された。

(*)SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)
IPSIは農地や二次林など二次的自然環境における生物多様性の保全やその持続可能な利用の促進のため、日本政府環境省及び国際連合大学高等研究所が中心となって提唱したもので、2010年、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD/COP10)の期間中に設立された。人と自然が共生してきた日本の「里山」が世界の自然共生社会のひとつのモデルとなりうると考えられている。

プロフィール

世界レベルでの生物多様性政策の推進役として、アルフレッド・オテング=イエボア博士は、生物多様性を世界的な政治の議題とするためのメカニズム確立に貢献してきた。博士は、生物多様性に関する国際的科学機構(IMoSEB)の共同議長を務め、2005年以来、生物多様性と生態系サービスのための科学と政策のインターフェイスの確立を目指す、世界的な議論のプロセスで重要な役割を果たしてきた。「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」の設立に際しては、IPBESの第1回~第3回会合に向けた国連環境計画の国際計画会議メンバーとして活動し、第1回、第2回会合の共同議長を、第3回会合では副議長を務めた。2014年2月3日、ニューヨークで開催された国連総会、持続可能な開発目標ワーキング・グループ第8セッションでは、IPBESの功績を総括し、「生命維持システム(life supporting system)」の重要性を訴えた。

また、2010年までに世界的な生物多様性の損失を実質的に削減するための戦略目標策定に向け、科学技術助言補助機関(SBSTTA)第9回、第10回会合 議長として機関の運営にあたった。博士はSBSTTA、COPで、バイオ燃料、SATOYAMAイニシアティブと持続可能な利用、森林、国家管轄権外海域、世界分類学イニシアティブ、キャパシティ・ビルディング、保護地域等、様々なグループ会議の議長を務めた。

また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約、CITES)」の副議長として、戦略ビジョンを起草、この案文は第54回会合において採択されている。「移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)」科学協議会では、アフリカを代表して発言。移動性野生動物種の飛路を確保するためには、科学的助言が欠かせないと述べた。UNESCO生物圏保護区国際諮問委員会メンバーとして3年間の任期を務め、新たな生物圏保護区の設立に関し支援を行った。さらに、ミレニアム生態系評価(MA)の委員を務め、世界の生態系資源に関する評価報告書の作成に貢献するなど、生物多様性関連の国際メカニズムにおける博士の貢献は甚大である。

現在は、ガーナ生物多様性委員会 議長、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)運営委員会 議長として、生物多様性の持続可能な利用促進に貢献している。

世界的な視点をもって、科学と政策のインターフェイスとしての役割を務めてこられた博士の存在は、アフリカの若い人々に影響を与えているだけでなく、世界の他の地域の人々、とりわけ、生物多様性の国際交渉に加わり始めたばかりの人々にも大きな影響を与え続けている。

※ このプロフィールは2014年に作成されたものです。

略歴

1946
ガーナ イースタン州タフォ生まれ
1968
ガーナ大学 学士号
1972
エジンバラ大学 博士号

主な顕彰・受賞歴

1969~1970年
エジンバラ大学 UNESCO給費研究者
1970~1972年
エジンバラ大学 ガーナ政府給費研究者
1972年
ロンドン・リンネ学会 フェロー
1975年
ブリティッシュ・カウンシル高等教育コース UNESCO給費研究者(ロンドン、7~12月)
1991年
スウェーデン研究フェローシップ(ウプサラ大学 生態植物学部において6か月間の研究、7~12月)
1995年
ガーナ生物学研究所 フェロー

関連ウェブサイト

バイオグラフィー

English