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プロフィール

Vo, Quy (ボ・クイ、ベトナム)

Vo, Quy (ボ・クイ、ベトナム)

ベトナム国家大学ハノイ校 自然資源管理・環境研究センター 名誉総長
The MIDORI Prize for Biodiversity 2012 受賞

ボ・クイ博士(1929年生まれ)は、ベトナム高等師範学校で生物学を学んだ後、1956年からハノイ大学(1945年ベトナム国家大学ハノイ校となる)で教鞭をとり、1960年代初頭にモスクワ大学に留学、1966年に鳥類学の博士号を取得した。その後、ベトナム国家大学ハノイ校動物学の教授に就任し、現在まで同大学の教授を務めている。

ベトナム戦争下、博士は他の研究者と共に非武装のまま数多くの戦闘地域に入り、密生する熱帯林や農地が枯葉剤の影響で広範囲にわたって荒廃しているという状況を目の当たりにし、国土を再び緑化することの重要性を強く認識した。博士は1971年から1985年まで「南ベトナムの環境および生活資源に対する枯葉剤の長期的影響調査」リーダー、1985年から1990年まで「枯葉剤の影響に関する委員会」副議長として戦争の影響で荒廃した森林の再生に尽力した。

1985年には、環境問題に関するベトナム初の研究および訓練機関である自然資源管理・環境研究センター(CRES)をハノイ大学(現ベトナム国家大学ハノイ校)に創設した。同センターで博士は、他の科学者たちと協働し、国土の50%の森林を復元させることを目標にマスタープランを作成、この計画は国家の環境戦略として採用されている。1989年には科学者チームのリーダーとして「ベトナム環境保護法」の作成に関わる等、環境保護の国策の作成に際して中心的な役割を果たした。さらにCRESの若手科学者が、保護区の管理やベトナムの自然保護の必要性を示すガイドラインを提示し、住民が進める環境保全事業や環境政策の推進に貢献する等、人材育成にも貢献している。

また、戦争の影響で絶滅したと思われたヒガシオオヅルを発見するとともに、インドシナ半島での渡り鳥保護協定の締結など保護活動に尽力し、1988年には1,000羽以上の飛来を実現させるなど野生生物保護においても多大な貢献をしている。1986年からは、国際自然保護連合(IUCN)のメンバーとして、絶滅の危機にある野生生物種の保全に尽力してきた。また数年にわたり世界自然保護基金(WWF)、国連環境計画(UNEP)、ユネスコ「人間と生物圏」計画(MAB/UNESCO)と緊密に協働するなど、国際的にも広く生物多様性の保全に貢献している。

国土の自然を保全し、再び緑化するために、住民が主体となって進める環境活動を積極的に推進してきた博士は「ベトナム環境保護の父」と呼ばれており、ベトナムの荒廃した自然環境の保全・修復に関する努力と成果は、同様の課題を抱える開発途上国の模範となっている。

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