「自然の恵み（Ehrensache Natur）」プロジェクトは、自然保護の専門ボランティアを管理する ボランティア・プログラム。このプログラムは、ドイツの自然と国立公園を保護する団体 ユーロパーク・ジャーマニー（EUROPARC Germany） によって実施されてきました。

 

 

2005年に国家自然景観計画が開始されて以来、40以上に及ぶドイツの国立公園、自然公園、ユネスコ生物圏保護区の管理事業において、ボランティアのコーディネーションは不可欠なものとなりました。毎年、3000名に及ぶ幅広い年齢層の「公園ボランティア」が、自然保護、生物多様性、環境教育に関する広範なプロジェクトに参加し、公園スタッフをサポート。牧草地の草刈、植樹、エクスカーションの指導、動物のモニタリング、遊歩道の維持管理、データ処理といった活動に従事しています。またボランティアは、それぞれの保護区において、職員の中から選ばれた認定ボランティア・コーディネーターから指導を受けています。

 

アンゲラ・メルケル首相は、気候変動や生物多様性の保全など地球規模での環境問題に関し、国家、EU、世界レベルでリーダーシップを発揮したことが評価され、2010年、The MIDORI Prize for Biodiversity （特別賞） を受賞しました。メルケル首相はこの賞金を「自然の恵み」プロジェクトに寄付、生物多様性と自然の生息地の保全を支援しています。この資金提供により、ユーロパーク・ジャーマニーと国家自然景観計画は、ボランティア参加型の保全プロジェクトを実現することができました。

 

2012年には、ボランティア参加のパイロット・プロジェクトとして、ミッテルエルベ（Mittelelbe）生物圏保護区の河岸で、樫の木の保全活動と植樹が実施されました。また実践的な保護活動として、子供向けのコンペティションが開催されました。このコンペティションは、教育プログラム「樫の木」モデルの展開を目的とするもので、インフォメーション・センターの展示モジュールとしても利用されています。

 

2013年現在、「自然の恵み」パイロット・プロジェクトではミュリッツ（Müritz）国立公園の沼地に着目、ボランティア活動として沼水の排水溝を閉鎖しています。ここでの排水溝の廃止により、気候保護にも非常に重要な、貴重な生息地が保護されています。

 

パイロット・プロジェクトの他にもボランティアが参加するプロジェクトは多くありますが、このうち最優秀の評価を受けたおよそ10のプロジェクトは 毎年 資金援助を受けており、「ボランティアがいかにして自然保護に貢献できるか」という事例を示す 他の公園向けのモデル事業として、その役割を果たしています。例えば、チューリンガー ・シーファーゲビルゲ／ オーベル・ザーレ（Thüringer Schiefergebirge/Obere Saale）自然公園ではサンショウウオの生息地状況が、ズートオスト＝リューゲン（Südost-Rügen）生物圏保護区では侵入種に対する状況が、それぞれ改善されました。また、ドゥロームリンク（Drömling）自然公園内には、子供たち向けに自然を残した遊び場が建設されました。

 

今やこうしたボランティア・プログラムは、公園周辺の地域住民ひとりひとりだけでなく、国際ボランティアや、精神疾患を抱える人々のグループなどにも働きかけるものとなりました。近年、この観点からプログラムは拡大し、企業のボランティア活動、旅行者ボランティア、保護区におけるジュニア・レンジャー・グループ活動を修了した若者たちにも参加の輪が広がりつつあり、ツーリズム・セクターやビジネス、国家自然景観計画におけるジュニア・レンジャープログラムなど、様々なターゲット・グループを対象とした協働関係が確立されています。

 

 

（アンヌ・シーレンベルク、ユーロパーク・ジャーマニー、景観計画エンジニア／国家自然景観計画プロジェクト・マネージャー（ドイツ大規模保護区ボランティア・プログラム担当））

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自然の恵み」プロジェクト保護区、オーデルタール下流（Unteres Odertal）国立公園（カタリナ・フェットヴァイ撮影）

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自然の恵み」プロジェクト保護区、ハルツ（Harz）国立公園（ステファニー・シューベルト撮影）