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2014/04/10
生物多様性の価値化:バイオリテラシーと教育 - ロドリゴ・ガメス=ロボ

 

生物多様性の未来について、コミュニティとしての私達はどのように環境に関わるべきでしょうか。このことについては、政治、政府、社会、宗教、科学、ビジネスといった各界のリーダーによる国家規模・地球規模の意思決定で進められていくことになるでしょう。しかしこれに等しく重要なのは、個人としての私達が、同じ目的に向かってどのような意思決定をしていくかということにあります。 

 

こうした意思決定を実行するために、私たちはまず合意する必要があります。合意にたどりつけるか否かは、「人間の福利は完全に自然に依存したものであり、私たちは自然を守り、その持続可能な利用に努めなければならない。」という共通認識に大いに関わってきます。 

 

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「こうした共通認識はバイオリテラシーによって共有できる」という考えのもと、コスタリカ生物多様性研究所(インビオ)は、積極的な活動を続けてきました。バイオリテラシーの概念は「生物多様性に感謝し、生命の尊厳の倫理を受け入れ、あらゆる生物と生態系の管理・保護に責任を持つ、ダイナミックで、実践的で、継続的な学習プロセス」と定義できます。私たちが行動を変えることで、自然との共生的な関係への支持は高まり、人間による持続可能な開発が達成されていくでしょう。 

 

子供というのは生まれながらの探求者、ナチュラリストであり、また同様に私たち人類は、生まれながらにして自然に魅力を感じていると、科学者や教育者は考えています。そのため、自然科学への関心、自然に魅了されること、自然への賛美は、子供時代に培われるのが理想的だといえます。楽しみや感動が学習過程に加われば、子供たちはこうした考え方、感じ方を、生涯にわたって抱くことになるでしょう。これは重要かつ実践的な考察です。

 

インビオではこうした考察を取り入れ、構成主義的アプローチに基づいた実践的なパイロット・プロジェクトを実施してきました。プロジェクトからもたらされた貴重な経験と方法論は、適切な教育手段や教育機関を通じ、地域レベル・国家レベルで広く応用され繰り返し実践されています。

 

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双方向性のリクリエーション施設であり生物多様性の教育テーマパークである「インビオパーク(INBioparque)」は、これら数々の経験のうちのひとつを発展させ、形にしたものです。インビオパークでは主に都会に居住する子供たちや大人が自然と直接触れ合い、実践的な学習経験を経てバイオリテラシー・プロセスを学び、知見を高めています。

 

「サイバーハイブ(Cyberhives)」は、多様性教育のためにインビオが考案した革新的な方法論です。生徒がコミュニティ独自の生物多様性の価値を学びその価値を高めることを目的としており、教室、自然空間、サイバースペースを利用した「学びのバーチャル・コミュニティ」という研究プロジェクトをとおして地方の小・中・高校で実施されています。

 

また、「エンジョイ・サイエンス(Enjoy sciences)」は、創造的で挑戦的なもうひとつの取組で、双方向性のアプローチにより自然と関わることで、学生たちに構成主義的で魅力的な経験の機会を与えています。ここでの経験によって、学生たちは科学的な考察を深め、自然科学、精密科学に対する真の関心、好奇心を抱くきっかけを与えられます。

 

インビオでは、このような様々なアプローチを広範に応用することで、バイオリテラシーを推進しており、とりわけ、若い世代による愛知ターゲットの目標1「生物多様性の価値と、それを保全し持続可能に利用するための行動を人々が認識する」の達成に貢献できるものと考えています。

 

 

(ロドリゴ・ガメス=ロボ、コスタリカ生物多様性研究所(インビオ) 代表、The MIDORI Prize 2012 受賞者)

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