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2014/06/20
ロンドンオリンピック2012 ‐ 英国に残した環境遺産

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トップクラスのスポーツ競技が繰り広げられ、世界中で無数の人が見守るロンドンオリンピック2012は、まさしくグローバルなイベントだった。それだけではなく、会場の建設プロセスと管理において実践された環境配慮型の手法や、英国各地で特別開催された文化的イベントが、さらに多くの観客を呼び、オリンピックはロンドンだけでなく国全体に広がった。

 

英国では、「史上最も環境に配慮した大会」を実現するために予算を超過するほどのコストを費やす必要があるかどうか、多くの人が懐疑的だった。個人的には、いったんすべてが始まると、それほど多くの異論を耳にしなかった。スポーツから文化的活動まで、楽しめることがあまりにもたくさんあったのだ。また、建造物のデザインや技術的イノベーション、そして、会場で行われるすべての活動を可能な限り環境に配慮したものにしようとする真摯な努力に対しても、私たちは誇りを覚えた。さらに、大勢のボランティアが参加して、大会に訪れた人々をサポートした。自分もその一部となるということは、一体感、肯定感、そして心地良さを与えてくれた。

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これらすべてのイベントや活動を詳しく説明するスペースはないが、私たちが心から感銘を受けたいくつかの例を挙げたい。それは、みなさんが東京オリンピック2020に何を求めるかを考える一助となるだろう。オリンピックは、経験を広げ、オリンピックの旗のもとで世界に紹介される自国の様々な文化的伝統と活動をより多くの人に体験してもらう絶好のチャンスだ。

 

 

 

ロンドンオリンピックは現に、多数の環境イニシアティブを実現させた。建設された建物は、大会後も使用されている。会場全体でリサイクルを活発に行い、輸送手段には電動バギーと電気自動車を使用し、二酸化炭素排出量を削減した。野生生物を保護した公園エリアは並木道と花畑が整備され、大会後は遺産として現存している。このような有意義な活動が広大な用地に展開された。その一部は長年打ち捨てられていた土地だったが、これを機に、地元の人々はそこに留まり、人生において転機となることをしようという気持ちになった。オリンピックによって、今後の人生に応用できる技能を身に付けた人々もいる。以前は持っていなかったかもしれない技能が、これからずっと使えるようになったのだ。

 

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環境に配慮した建造物の非常に良い例が、ベロドローム(自転車競技場)である。ホプキンス・アーキテクツが設計したこの競技場は、自然換気による冷房、雨水貯留、自然光を活用し、再利用可能な軽量資材を用いて建設された。白い屋根は太陽光を反射し、真夏の太陽下でも屋内を涼しく保つ。建物の外壁を覆うシダー材は、呼吸をし、新鮮な空気で観客席を涼しくする。また、お椀のような形をした屋根で雨水を集め、貯留して後で使用する仕組みだ。

 

リサイクルのもうひとつの好例がバスケットボール・スタジアムで、これは解体してリサイクルすることができる。スタジアムに使われたすべての材料は、埋立地に廃棄されたり、他のオリンピックで使われた一部のスタジアムのように、活用されないまま長年遺産として放置されたりするのではなく、別のプロジェクトに活用されることになっている。

 

会場内とロンドン周辺の会場への移動のため、自動車メーカーのBMWは、250台を超える電気自動車とハイブリッドカーをイベントのために提供した。これらは、大会主催者、審判、職員、スタッフが使用し、二酸化炭素排出量の削減に一役買った。

 

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ロンドンオリンピック2012で使用されたすべての食品用容器包装は、デンプンやセルロースのような堆肥化できる素材で作られた「バイオプラスチック」製で、膨大な量の堆肥化できない素材が埋立地に廃棄される事態を防いだ。ロンドンオリンピックでこれができるなら、ほかでできないことがあるだろうか? また、よくあるテイクアウトの食品をこのような堆肥化可能な容器に入れることについても、おかしなことではないだろう。

 

東京オリンピック2020にとって、ロンドンオリンピックは活動の良い見本となるだろう。それにより、建造物、輸送、容器包装、廃棄物処理、人員管理、野生生物保護におけるいっそう素晴らしい環境イノベーションの遺産をもたらし、将来世代に残すことができるだろう。どのオリンピックでも、物事の新しいやり方が編み出され、それが他の国でも採用されるようになるものだ。2020年までに日本は、再生可能エネルギーにおける技術力を生かし、会場でアスリートや大会職員を輸送する電気自動車を導入することができるだろう。これは当たり前のことになるだろう。容器包装は完全にリサイクル可能になり、より幅広い社会において当たり前のものとなるだろう。再生を必要とする地域には、雨水を集め、みずからを冷房し、エネルギーを作り出し、別の場所で建材として再使用できる、素晴らしい革新的な建造物が建つだろう。まさにオリンピックの遺産である。別の地域社会のために繰り返し使用することのない建物に、巨額の費用をかけることは許容されるものではない。

 

オリンピックには必ず巨額の費用がかかる。しかし、それによって国が活気づき、以前は資源が不足していた地域も再生させることができる。オリンピックの後はその遺産として広大な公園が残り、野草の花畑が広がり、並木道が続き、そしてこれらの地域の多様性が豊かになるため、長年にわたって人々が楽しむことができる。社会と人々の幸福にとって素晴らしいことだ。過密都市では、人々が安全な環境でリラックスできる場所があることは重要である。交通の便が良くなれば、人々が都市を動き回るのが容易になり、また、近代的で効率的な交通システムを利用したいと思い、自動車の利用が減るだろう。

 

今から6年後、待望の東京オリンピック2020が開催される。オリンピックに何を望むかを大いに議論し、より啓発的で、持続可能で、参加型のオリンピックにするための時間は十分に日本にある。

 

2012年はロンドンの番だったが、今度はみなさんの番だ。そしてオリンピックは、みなさんが望む通りのものにすることができ、それを体現できるものとなる。

 

 

(エイドリアン・ウッドホール、フリーランス エコロジスト/環境保護活動家)

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