生物多様性みどり賞(国際賞) 「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が
20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」
(生物多様性みどり賞)を創設しました。
「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」(生物多様性みどり賞)を創設しました。

The MIDORI Prize for Biodiversity 2018 受賞者

※受賞者のプロフィールは受賞当時のものとなります。

アサド・セルハル(レバノン)

レバノン自然保護協会(SPNL) 事務局長

受賞のことば

生物多様性みどり賞を受賞したことを大変光栄に存じます。レバノンとして初めての受賞であるばかりでなく、問題を抱える中東地域を代表して受賞できることを、大変光栄に存じます。これまでの受賞者リストを拝見すると、大変尊敬する方々ばかりであります。このような偉大な方々のグループの一員になれたことは、大変な名誉であります。改めて感謝申し上げます。

私は 1982 年にレバノン自然保護協会(SPNL)の共同設立に着手しました。1993 年 SPNL はレバノン初の国際自然保護連合(IUCN)のメンバーになり、IUCN の助けを借りて、同年にレバノンにおける最初の3つの保護区プロジェクトを開始しました。後に、私はアルシューフ杉自然保護区において、レバノン自然保護区の最初のマネージャーに起用され、自然保護区の設立支援、ガイドと監視人の教育を行いました。その何名かは、今もなお保護区管理に従事しており、アルシューフ杉自然保護区が、世界的に広く認知されることに、大きく貢献しました。生物多様性賞みどり賞を受賞できたのは、IUCN やバードライフ・インターナショナルといった、素晴らしい組織のおかげであり、心より感謝いたします。私がみどり賞を受賞したことで、「HIMA」(アラビア語で「保護地域」の意)再生の努力がより広く認知され、生物多様性を保全と地域で活動に関わる人やコミュニティーへの力づけになることを期待します。その結果、過去 30 年間の SPNL の活動、HIMA や HIMA に携わる人々の活動がさらに推進されて、民間セクターや社会経済との連携が深まり、より進んだ自然資源の持続可能な利用につながるでしょう。

今回の受賞により、私と私の家族(ゼイナ、アデル、サリー)の人生が変わるだけでなく、SPNL と我々の地域の人々の人生が変わることでしょう。その意味で、皆様に終生の感謝を申し上げます。

受賞者の功績

生物多様性保護の活動は、世界中のどこにおいても挑戦だが、中東など紛争地域においては、ことのほか困難あり、保護が克服不可能なレベルの脅威に晒されている。以下は、その中で活動するアサド・セルハル氏の業績である。

中東には、大変重要ではあるが、危険に晒されている渡り鳥の飛来コースがある。またレバノンは小国ではあるが、すばらしい生物多様性に富む生息地を保有する国である。セルハル氏は母国であるレバノンの自然遺産を保護することが、彼の使命であると感じたという。レバノンはまだ内戦下にあったが、アメリカで野生生態管理学を学んだセルハル氏は、その知識を母国の自然保護に役立てようと決心した。

セルハル氏は、キャリアの初期に、北米や西欧の自然保護・管理モデルが、中東地域の地域社会に合わないことに気づき、1984 年 SPNL を設立し、地域の文化や価値観に合致する自然保全プログラムを策定した。科学的・社会的調査に基づいた、伝統的な地域主体の保護モデル「HIMA」を復興させることにより、レバノンの自然保全に大改革をもたらした。HIMA の要素である、人々のエンパワーメントと地域文化は、自然保護には欠かせない要素で、両者は、共に前進するべきであることをセルハル氏は、主張する。これまでに、3 つの自然保護区、4 つの鳥類地域、中東の陸地、湿地、海洋生息地に範囲が及ぶ 22 の HIMA、SPNL の 5 つのプログラムや保護戦略の設立に大きく貢献した。IUCN、MAVA 基金、バードライフ・インターナショナルなどの国際機関が、HIMA のアプローチを採用しており、セルハル氏は、カタールでの HIMA 基金の設立にあたって援助するなど、HIMA の概念は、中東を越えて、国際レベルでの保護モデルとなっている。

セルハル氏は、故郷の生物多様性と生息地を保護するという夢を持って、キャリアをスタートさせたが、その夢は故郷に留まらず、世界の広い地域で達成された。情熱的な自然保護主義者であり、かつ、人道主義者でもある。このような彼の活動は、世界中の自然保護活動家に刺激を与えている。