生物多様性みどり賞(国際賞) 「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が
20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」
(生物多様性みどり賞)を創設しました。
「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」(生物多様性みどり賞)を創設しました。

The MIDORI Prize for Biodiversity 2016 受賞者

※受賞者のプロフィールは受賞当時のものとなります。

ヴァンダナ・シヴァ(インド)

ナウダーニャ 創設者・代表

受賞のことば

生物多様性の保全への貢献につきまして、私にThe MIDORI Prizeを授与し、顕彰して下さる公益財団法人イオン環境財団に、心よりお礼申し上げます。私が今後も、地球、地球の多様な恵み、そして多様な地域コミュニティのための活動を続けて参りますことを誇りに思います。

過去50年にわたり、生物多様性は私にとっての教師でした。私はチプコ運動(樹木に抱きつく運動)を端緒に、ナウダーニャ運動を継続し、過去30年間の間に、小規模農家の生活手段を保障する収穫と種苗の生物多様性、子供たちの栄養保障、気候変動に直面した生態系の気候に対する耐性とを守って参りました。

生物多様性とは、生命の連鎖です。地球に生きとし生ける生命と生命を紡ぎ出しているものです。人間は種苗や植物の発明者でも所有者でもありません。これこそ私が過去30年間にわたり、コミュニティ・シード・バンクを開設し、動植物は人間の発明品ではないのだということを明確に述べた法案を通過させるために政府と協働してきた理由なのです。

また私は、バイオセーフティに関する議定書の枠組を創出する専門家グループの一員として、生物多様性条約事務局と協働するという栄誉にも預かって参りました。

人類は、深まる独占欲、ひろがるモノカルチャーの証人として、かつてないほどにこうした手段を必要としています。

生物多様性は私たちに、他の生物と地球をシェアすること、そして地球は一つであり人類はみな兄弟だということを示す多様な文化をシェアすることを教えてくれるのです。

授賞理由

ヴァンダナ・シヴァ氏は、「アース・デモクラシー(大地の民主主義)」の理念に基づき、生物多様性を保全し、種苗を守り、農家の権利を保護する伝統的な有機農法の推進に生涯を捧げて取り組んできた。1990年代中頃以来、同氏は伝統的な知見と生計手段、持続可能な農業と生物多様性の保全、とりわけ、インドの女性、小規模農家、先住民および地域コミュニティといった、小規模コミュニティや社会的弱者のグループを支援してきた。シヴァ氏が創設した「ナウダーニャ(Navdanya)」は、インド18州にわたる種苗管理者と有機農産物生産者のネットワークであり、持続可能な農業や農業生態学的技術に関するトレーニングを実施する機関である。

ウッタラーカンド州にあるナウダーニャの農場では、2,300種以上の稲、小麦、大麦、オート麦、カラシ、キビ類、豆類、スパイス、野菜、薬用植物が保全されている。またこの実験農場では、革新的な農業生態系技術を発展させ、地域の資源や生物多様性研究に応用している。

2004年には、学習センター「地球大学(Earth University)」を設立。現在までにナウダーニャは、インド国内に122のコミュニティ・シード・バンクを設立、80万人以上の農業従事者に対し、種苗の保全、食料の主権、持続可能な農業に関するトレーニングを行ってきた。また、同国において最大の有機農産物のフェア・トレード市場の設立を支援してきた。

ナウダーニャにおいては、女性が重要な役割を果たしている。「多様性のための多様な女性達(Diverse Women for Diversity)」は、シヴァ氏によって1995年に始められた世界的なムーブメントである。このムーブメントは、種苗に関する女性のスキル、知識、生計手段、健全で伝統的な食料の加工を推進することで、女性を支援し、社会に利益をもたらすものである。

「希望の種(Seeds of Hope)」プロジェクトは、ナウダーニャの地方レベルでの活動の効果を物語る好事例である。2011-2015年、ウッタラーカンド州の農場でトレーニングを受けた486名の農業従事者(95%は女性)が、有機農法への転換によって55%の余剰生産をあげ、13のコミュニティ・シード・バンクを運営するに至った。これによって生物多様性は25%増加し、土壌の質は10%向上した。また、お祭り、マルシェ、情報交換などが行われ、生物多様性、食料の主権、種苗に対する農家の権利についての認識が高まった。さらに、ナウダーニャの生物多様性に基づく農業によって、食料安全保障と栄養とが向上した。1エーカー当りの栄養摂取と健康度を測定したところ、生物多様性を保全することで、インドの食料供給が2倍となることがわかった。また、1エーカー当りの富によって測定される真実原価計算によると、社会的弱者である小規模農家の収入が10倍に増加することがわかった。よって、彼女とナウダーニャの活動は、「持続可能な開発目標」の中でも目標1. 全ての場所における、あらゆる形態の貧困の解消、目標2. 飢餓の解消、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進、目標5. ジェンダー平等の達成、全ての女性および少女への権限と能力の付与、目標12. 持続可能な消費及び生産様式の確保、目標13. 気候変動及びその影響に対処するための緊急な行動、そして、生物多様性の損失の停止を含む目標15に貢献しているといえる。「希望の種」プロジェクトは、コミュニティの食の安全における女性の主導的な役割を大いに支援するものである。気候変動のメカニズムや問題点を理解し、消費者である市民の支援を得ることで、農業従事者は生産習慣を変えることができるのである。

またシヴァ氏は、作物栽培学・経済学の研究手法・知見に基づいて、国内外の政策に影響を与え、生物多様性、遺伝資源へのアクセスと利益配分、バイオセーフティに関する世界との対話にも貢献を果たしてきた。シヴァ氏は、インドの小規模農家と共に選択的な解決策を推進し展開してきた。また専門家として、生物多様性条約、インドの生物多様性法、植物の多様性と農家の権利に関する法、森林権利法に貢献を果たした。意欲的な政策に対する彼女の大きな影響力は、地球の生物多様性と人権を守るための世界的な協力関係をも形成している。

以上に述べたヴァンダナ・シヴァ氏の偉大な業績は、本賞の理念に一致している。よって彼女は、The MIDORI Prizeの受賞者にふさわしい人物である。

略歴
1952年 インド ウッタラーカンド州デラドゥーン市生まれ
1973年 インド チャンディーガル パンジャブ大学 素粒子物理学修士号
1975年 カナダ ゲルフ大学  科学哲学修士号
1979年 カナダ ウェスタン・オンタリオ大学  量子論博士号 「量子論における隠れた変数と非局在性」について
  • 食糧の未来国際委員会 議長
  • インド政府環境森林省 生物多様性アクション・プラン 専門家中核委員会メンバー
  • 女性の環境・開発機構(WEDO)創設委員、共同議長(米国)
  • グローバリゼーション国際フォーラム(IFG)委員(米国)
  • 農業に関する国際フォーラム 議長(米国)
  • 欧州議会 P7 サミット 名誉総裁(ベルギー王国)
  • 第三世界ネットワーク 科学・生態学アドバイザー(マレーシア)
  • 土壌と水に関する保全研究・研修所 諮問委員会 アドバイザー(インド、デラドゥーン)
  • 大学助成委員会 諮問委員会委員(インド)
  • インド第9次環境計画 計画会議 運営委員会 委員
  • 国連環境計画 バイオセーフティに関する第1次ワーキング・グループ メンバー
  • インド政府人材開発省 生物資源の知的所有権に関する協調的アプローチ開発の中核グループ メンバー
  • 国家労働委員会 グローバリゼーションと労働に関する専門家グループ メンバー
  • インド会計監査局・会計検査院 諮問委員会 メンバー
  • アジア・ウィーク・マガジン「アジアで最もパワフルな5人」
主な顕彰・受賞歴
1993年 オランダ王国ゴールデン・アーク勲章(保全活動と生態学に関する傑出した業績に対しベルンハルト皇太子より授与)
1993年 国連環境計画グローバル500賞(傑出した環境活動に対して)
1993年 国連アースデイ国際賞(保全活動への献身的な取り組みと、その世界的な影響力に対して)
1993年 ライト・ライブリフッド賞(もうひとつのノーベル賞と称されることもある。開発プロセスにおける社会・環境コストに関する先進的な洞察、地域の人々との協働、選択的な方策の実施に対して)
1993年 ヴィーダ・サナ国際アワード(生態学と食料の安全性に関する貢献に対して、スペイン王国)
1995年 ドゥーンの誇りアワード(インド デラドゥーン、ドゥーン市民協議会、地域への卓越した貢献に対して)
1997年 ゴールデン・プラント・アワード(生態学に関する国際賞、生態学と環境に関する貢献に対して、デンマーク)
1997年 アルフォンソ・コミン・アワード(スペイン バルセロナ、インドの生態学者・フェミニストとして、科学者またひとりの人物として重要な貢献を果たし、ジェンダー、生態学、民族性、階級、人権に関する視野を大きく広げたことに関して)
1998年 記念メダル(食糧農業機関 (FAO)アジア太平洋地域オフィスによる第18回世界食料デーにて、タイ王国マハー・チャクリ・シリントーン王女より授与)
1998年 イタリア共和国大統領メダル(第24回ピオ・マンズー「ヘルメスの展望」国際会議にて、イタリア共和国リミニ、ピオ・マンズー・センター国際科学委員会より授与)
2000年 ペレグリーノ・アルトゥーシ・アワード(人間と食料の関係に関する独自の貢献に対して、イタリア共和国)
2001年 シルディ・サイ・ババ・ゴールド・メダル
2001年 ホライズン3000アワード(人権の保護と平和の維持への貢献、第3の千年紀における世界的で公平な開発のビジョンに対して、オーストリア共和国)
2008年 レノン・オノ・グラント・フォー・ピース・アワード
2010年 シドニー平和賞
2011年 ドシ・ブリッジビルダー・アワード
2011年 カルガリー平和賞
2011年 トーマス・マートン・アワード
2012年 福岡アジア文化賞
2012年 ザ・プリズム・オブ・リーズン・アワード
2016年 グリフォン・ダルジェント賞
関連ウェブサイト
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