生物多様性みどり賞(国際賞) 「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が
20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」
(生物多様性みどり賞)を創設しました。
「国際生物多様性年」であった2010年、イオン環境財団が20周年を迎えたことを記念して「The Midori Prize for Biodiversity」(生物多様性みどり賞)を創設しました。

第6回生物多様性みどり賞(The MIDORI Prize for Biodiversity 2020)受賞者

※受賞者のプロフィールは受賞当時のものとなります。

ウィルシー・エマニュエル・ビニュイ (カメルーン)

環境活動団体「カメルーン ジェンダー・環境ウォッチ」(CAMGEW)創設者

受賞のことば

みどり賞を受賞し、大変光栄に存じます。まだ夢のように感じますが、生物多様性保全における私の努力と私の地域活動が、世界的に認められ、大変嬉しく思います。

私は生物多様性への熱い思いを持って育ちました。大学では環境科学部に所属し、修士課程では環境再生を学びました。大学時代には「ザ・ポスト」という新聞で、環境に関するコラムを執筆していました。その後「カメルーン野生生物救済基金(Cameroon Wildlife Aid Fund)」のボランティアとして、霊長類の生息区域外での保全に従事し、更には「グローバル・ビレッジ・カメルーン」において生息区域内での保護活動にも関わりました。 デンデン森林のゴリラやチンパンジーを密猟から保護し、その生息地をロムパンガーダムの氾濫から保全する事業に携わりました。

2007年「カメルーン ジェンダー・環境ウォッチ(Cameroon Gender and Environment Watch)」を設立して、キルムイジム森林の生物多様性を破壊していた森林火災の撲滅に取り組み始め、養蜂という手段で、地域社会の保全への参画が可能になり、2012年は7回あった森林火災が、2019年には一度も起こらないまでに状況を改善することができました。同時に、地域社会には雇用と収入がもたらされました。 CAMGEW-蜂蜜ショップは、養蜂家の蜂蜜生産を、収入に繋げるものになり、その収入の一部は、地域社会を通じて、森林火災の防止費用になっています。また、キルムイジムの森林における12種類87,250株の在来種の植林を主導し、1200人以上の養蜂家を育てました。

みどり賞の受賞は、情熱、努力、献身は必ず実を結ぶということを示すことができたと考えています。先住民の知識を使って森林を保護するカメルーンの地域社会に、この賞を捧げます。

受賞者の功績

ウィルシー氏は、「CAMGEW」の創設者、ディレクターを務める。大学では環境科学部で、その後修士課程では環境再生について学んだ。 2007年10月にCAMGEWを設立以来、同国における環境とジェンダーに関する問題解決策を模索する非営利団体を運営している。CAMGEWは、「地球規模で考え、地域で行動しよう」を体現し、環境とジェンダー問題を併せて解決している。

種子や苗木の収集に地域社会の協力を得て、森林の保全・再生に取り組んでいる。苗床を開発し、森林パトロールの整備を行い、更には、地域社会にとって持続可能な収入源となる養蜂業を取り入れた。その他環境教育の実践、養蜂業協同組合の組織化と能力開発に大きく貢献してきた。2012年以来カメルーン北西部の2万ヘクタールに及ぶ「キリム・リジム」森林の再生に取り組み、2020年時点で、87,250本の在来種の植樹を完了させ、15万本にも及ぶ在来種である3種の苗床を開発した。地方自治体や森林の各ステークホルダーと協力し、森林問題を議論するためのプラットフォームを設立、その結果、7つの森林管理に関する機関が誕生した。また、30万人の森林地域住民に対して環境教育を実施することで、自然を愛し、森林に対するネガティブな行動からの脱却を目指してきた。さらに、Facebook、新聞、ウェブサイト、ブログ、テレビ、ラジオなどのメディアや学校や様々なグループ、訓練などを通じて教育の場を広げている。

ウィルシー氏は、地元住民が森林管理に携わるには、養蜂業が最善であると確信した。 なぜなら、養蜂は雇用を生み出し収入をもたらすため、収入源であるハチの巣箱を守るのに、彼らは森林火災と闘い、結果森林保全に貢献することになるからだ。約2000人の地域住民が養蜂業の訓練を受け、6つの養蜂協同組合を組織した。州都バメンダに蜂蜜店を出店し、蜂蜜を収入源にすることが可能となった。こうして養蜂の導入により、地域社会に雇用と収入が生まれた。それは、結果として、ジェンダーの平等と森林保全にもつながった。元来は環境とジェンダー問題を解決することを目指していたが、影響はそれだけにとどまらず、生物多様性の保護と持続可能な利用に大きく貢献することとなった。

ウィルシー氏は森林再生のプラットフォームで、カメルーンにおける環境の改善を主導し、養蜂業に効果的に取り入れ、地域に適した環境保護活動を推進した。ある1つのイニシアチブから次のイニシアチブへと、その経験を応用していく彼の能力は、環境保護活動に参加する女性と若者の増加から明らかだ。地域社会のみならず、世界的に大きな影響を与えている。