第5回 生物多様性日本アワード(2017年)



第5回(2017年)は、グランプリとあわせ5組の優秀賞が選出されました。

グランプリ

「高知県西南端柏島・島が丸ごと博物館(ミュージアム)」持続可能な里海づくり

「高知県西南端柏島・島が丸ごと博物館(ミュージアム)」持続可能な里海づくり

NPO法人 黒潮実感センター(高知県)

温帯域にありながら熱帯・亜熱帯域を凌ぐほどの生物多様性の宝庫である高知県柏島。暖流黒潮の影響を強く受ける周辺海域は造礁サンゴや藻場が広がり、生息する魚種は国内最多の1,000種を超えている。このプロジェクトは、高知県西南端にある柏島において、豊かな自然と、そこに住む人の暮らしとを「島がまるごと博物館(ミュージアム)」と捉え、海と人とが育みあう持続可能な里海モデルの創出を目指す活動である。多様なステークホルダーが漁業や観光の視点から生物多様性に取り組み、保全と利活用の両立を実現している。

優秀賞

宮城県漁業協同組合(宮城県)

国際養殖認証の取得を通じた持続可能で高品質なマガキの養殖生産
宮城県漁業協同組合(宮城県)

2011年の東日本大震災で喪失したマガキの養殖施設再建に持続可能性という視点から取組み、海の環境に合わせたマガキの生産を実施、カキの成長速度と品質を向上させた。さらに大学等の研究機関、NPO、役場等と連携して志津川湾の環境調査に積極的に協力し、持続可能な養殖を推進する「海のエコラベル」ASC認証を日本で初めて取得。国内外の団体研修受け入れや認証マークのパッケージ表示等を通じ、認証制度の普及にも寄与。人による海への働きかけ(里海)の維持と、生態系への配慮、消費活動を結びつけ、「持続可能な養殖」を推進している。

一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)(東京都)

企業における生物多様性主流化のためのツールやガイドラインの開発
一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)(東京都)

JBIBでは、生物多様性の保全に積極的に取り組む幅広い業種の企業を会員として組織化。日々の業務の中に生物多様性への配慮を組み込むことを目的に、JBIB内に設置された「自然資本研究」「持続的土地利用」「水と生態系」「いきもの共生森づくり」「原材料調達」の5つのワーキンググループが、業務の実情に沿い事業にも貢献できるツールやガイドラインを開発してきた。こうして開発されたツールやガイドラインが、会員以外の企業にも、広く公開、提供、活用されることで、生物多様性の主流化に大きく貢献している。国内外で高く評価されている活動。

トンボはドコまで飛ぶかフォーラム(神奈川県)

トンボはドコまで飛ぶかプロジェクト
トンボはドコまで飛ぶかフォーラム(神奈川県)

京浜工業地帯において指標性の高いトンボ類に着目し、14年に及ぶ活動を、京浜臨海の企業、事業所、市民団体、行政機関、専門家等の連携によって精力的に継続。環境改善活動を長期にわたって楽しみながら実施し、都市部における生物多様性の取り組みモデルのひとつとなっている。市民科学による参加型の取り組みでありながら、トンボにマーキングをして追うという大変な作業を考案・実施した新規性が光る。市民調査手法の確立と市民と企業の協業など、新たな生物多様性のあり方として注目される。

山陽女子中学校・高等学校 地歴部(岡山県)

瀬戸内海の海底ごみ問題の解決に向けての女子中高生の挑戦
山陽女子中学校・高等学校 地歴部(岡山県)

女子中高生が自分たちの海とその生態系を回復させるために海底の浄化に取組む。社会制度的な枠組みに収まりにくく、対応が立ち後れている「海底ごみ」の複合的問題に着目し、教育機関ならではの立場から精力的に活動。漁船の底引き網を利用し海底ごみを引き上げ、堆積量を減少させることで、海底環境の浄化に努めている。さらに、回収量を大きく上回り陸域から河川を通じて海へ流入する生活ごみについては、その発生を抑制するため、出前授業、体験学習会等、生活にいかせる体験や学びを通じて啓発。海底ごみの問題を国内外に広く訴えかけている。