第3回 生物多様性日本アワード(2013年)
※第3回(2013年)は、グランプリとあわせ5組の優秀賞が選出されました。
- グランプリ
津波に被災した田んぼの生態系復元力による復興
宮城県気仙沼を始め、塩竈、南三陸、岩手県陸前高田を中心に生態系の復元力を活用した自然農法のシステム(ふゆみずたんぼ)で津波被災地の田んぼの復興を実現。1200名を超える多様なボランティアを被災地に導入し、手作業で田んぼの復興を試み、抑塩にも成功。被災した年の秋から豊かな収穫を享受するに至った。
また各地の生物多様性、水質、土壌成分の科学的なモニタリングにより、津波多発地帯の『津波被災後の農地は豊かになる』という言い伝えを科学的に証明。現地の信頼を得ながら継続的に津波被災地の田んぼを復元した。生物多様性の向上とともに、6次産業も含めた持続可能な経済システムが作り上げられつつある。
活動報告 : 津波に被災した田んぼの生態系復元力による復興
太平洋沿岸カツオ標識放流共同調査と一連の協働・普及啓発活動
太平洋のカツオ資源を見守り、持続的な維持に貢献することを目的とし、 2009 年度より、(独)水産総合研究センター国際水産資源研究所との共同事業として、西日本太平洋沿岸海域においてカツオの標識放流調査を継続実施。未だわかっていないことが多いカツオの生態(回遊行動など)についての理解を深めるべく、南西諸島海域においてカツオの標識放流調査を行っている。2012 年度には、黒潮源流海域で初となる累計約 500日間にわたる遊泳行動の詳細データの把握に成功。調査で得られた成果は、学術、国内水産行政、国内・国際漁業管理の面において重要であり、各種関連学会や水産関係者会議、また中西部太平洋資源管理機関に報告された。
「竹紙(たけがみ)」の取り組み
かつてのように利用されることが少なくなった日本の竹を製紙原料として1998年より集荷を開始。試行錯誤の末、現在では九州地区を中心に年間2 万トンを超える竹を紙の原料としている。竹を大量に活用していくことで、成長力の旺盛な竹の里山や森林への侵食を防ぎ、生物多様性保全に貢献する。また、これまで価値がなかった竹を買い取ることで、深刻な過疎の農村地域において地域経済や雇用に貢献している。何よりも、放置竹で荒らされた山がきれいになったと喜ぶ地域住民が増えている。紙の製造という本業を通じて、全国的に解決困難な社会的課題である放置竹林問題に挑戦している。
綾の照葉樹林プロジェクト
綾の照葉樹林プロジェクトは、九州森林管理局、宮崎県、綾町、(公財)日本自然保護協会、てるはの森の会の5者が協働して、約1万haのエリアにおいて国内最大面積の照葉樹林(約2500ha)を保護しているプロジェクト。二次林や人工林を照葉樹林に復元すること、自然と共生した地域づくりを支援することを目的としている。 日本の国有林では、2例目となる官民学協働プロジェクトの運営を担う事務局で、プロジェクトと市民を結ぶ窓口として、ボランティアと共に間伐体験、ガイド事業、林床調査、研究フォーラム等の多くの活動を行っている。
ネイチャー・テクノロジー創出のシステム構築
環境問題の解決のためには、従来の延長(フォアキャスト)ではなく、バックキャスト思考で心豊かなライフスタイルを描き、それに必要なテクノロジーを、完璧な循環を最も小さなエネルギーで駆動する自然から学び、新しい技術やビジネスを創出していく必要がある。
ネイチャー・テクノロジー研究は、テクノロジーを自然に学ぶだけではなく、人と自然の関わりをバックキャストや90歳ヒアリングで深く観、自然をさらに科学してその叡智を学んで活かすための研究と実践である。現在、多くの企業、地方自治体などを巻き込んで、研究・実践(ビジネス、政策開発)を行い、また、子供たちや社会人への教育活動も積極的に進めている。
いきものたちの3.11/東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
東北大学大学院が行う科学的な調査に一般市民をボランティア調査員として現地に派遣するプログラムをスタートさせ、地域の豊かさと強さにつながる生態系の回復力を助ける活動を実施している。
生態系ネットワーク+代償ミティゲーション=あいち方式 愛知目標達成に向けたコラボレーション
産業県・愛知において「環境と経済の調和」を図るため、多様な主体と協働しながら、分断された生息生育地をネットワーク化し、地域特有の生態系の保全と再生を図る「生態系ネットワーク形成」を推進している。
ふゆみずたんぼプロジェクトと「生きもの豊かな田んぼ」の取組
2006 年から、ふゆみずたんぼ型の農法の実践と調査、体験プログラムを毎年実施。そして、生物多様性保全に貢献する稲作農法を基準化し、農家に取組を呼びかけ、2010 年からそのお米をびっくりドンキーで提供。
エチゼンクラゲ類を活用したクラゲチップを用いた緑化活動の推進
愛媛大学農学部 客員教授 江崎次夫
日本近海で異常発生しているエチゼンクラゲやミズクラゲの持つ保水性と肥料分を利用し、土地に水分や養分を安定的に供給する研究を実施。これにより乾燥化、砂漠化した土地の緑化が可能となり、漁民の援助となる。
乙女高原の自然を次の世代に!
スキー場利用が2000年に終駕を迎え、草原の森林化が必至となっていた乙女高原の草刈りを継続し、生物多様性を保全。市・県と協働で、草刈りや、立ち入り制限を行い、植物群落を保護する遊歩道づくり等を実施している。
企業グループによる、自社の事業における生物多様性への負荷低減と保全推進のための取組
一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブは、生物多様性に配慮した事業活動を行う先進的な企業の集まりである。企業による生物多様性の保全と持続可能な利用への貢献を進めることを目的に、5つのワーキンググループがそれぞれ月に一回は集まり、継続的に研究やツール開発を行い、活用している。
重富海岸再生プロジェクト
美しい海岸、豊かな干潟を取り戻すため、2005年から海岸のクリーンアップや干潟の調査を実施。その後、地元自治会、子どもたち、測量専門学校、市、漁協、鹿児島大学等が次々と活動に加わり、再生が進んでいる。
多摩川における絶滅危惧植物カワラノギクの保全および復元活動
激減している礫河原固有種のカワラノギクの基礎生態学的な研究、保全生態学的研究、復元生態学的研究の蓄積と成果に基づいて、保全および再生の市民活動を展開。市民、行政、研究者の協働で活動を行っている。
「トンボかヒトか」から「トンボもヒトも」へ
~官民学連携による絶滅危慎種ヒヌマイトトンボ保全の成功~当会と三重県、環境コンサルタント会社が共同で行った生態調査結果をもとに、2003年、絶滅危惧I類に指定されているヒヌマイトトンボの新しい生息地を創出。10年に渡るモニタリングと保全活動の結果、本種個体数の増加に成功した。
みどりの遊び場 ~思いやりの心、命・もの・自然を大切にする心を育む体験の場づくり~
(園庭ビオトープ整備とその活用)「小学館アカデミー保育園」では、「あったかい心をもつ子どもに育てる」という理念のもと、保育園を建てる際に可能な限り「地域の自然や文化」を復活、保全させている。また、園内の生物多様性を高め、保育者の援助のもとで子どもと触れ合う機会を充実させている。
「いきものがたり(書籍・映像作品)」による生物多様性普及啓発活動
書籍「いきものがたり」を 2007年に発行、全国の小・中・高等学校など約 45,000 校へ寄贈。さらに、COP10の開催にあわせて映像「いきものがたり」を制作、公開。全国の教育の場で活用されている。
流域コモンズによってよみがえる”さとのくらし”
~都市住民と農山村住民の交流によって維持・再生される草原の恵み~地元住民と町役場と連携し、利根川上流における里山の自然の価値を現代的に見直し、その保全・再生と新たな利用管理の実現に取り組む。「里山の原風景」を回復させ、そこに生息する生きものの保全に繋げている。
生物多様性普及啓発のためのICTと映像教材を活用した次世代環境学習プログラム
ICT(情報通信技術)と映像教材を活用し、対話型のワークショップ形式の授業を進める次世代環境教育プログラムを開発。国連生物多様性の10年 日本委員会の認定事業にも選定され、今後、全国での展開を予定。
ヤンバルクイナをはじめとした野生動物の保護活動
沖縄島北部(「やんばる」)地域のみに生息し、同地域の生態系を象徴する希少な鳥類、ヤンバルクイナとその生息地の保全活動を10年以上に渡り実施。救護や飼育の他、さらに野生絶滅回避に向けた人工繁殖も実施。
絶滅危惧種オオアカウキクサ農業利用地域プロジェクト
長野県臼田高等学校 農業クラブ・農林業研究班
2004年より県の絶滅危惧種IB類に指定されているオオアカウキクサの農業利用に関する調査研究を地域連携で展開。中間山地域における休耕田管理や培養土への利用、堆肥化を目指し、継続研究や活動をしている。
復興の桑プロジェクト
2012年5月より津波の被害を受けた農家と共同で、塩害を受けた畑に桑を植え、その葉を商品化するプロジェクトを開始。地域に存在する自然資源を最大限活用した新しい産業で、地域社会の再生につなげている。
野生動物救護活動に関する支援事業
野生動物救護活動の支援者(野生動物リハビリテーター)を養成、認定することにより救護体制の強化。また、認定された野生動物リハビリテーターが中心となり、普及啓発活動や、生息地保全再生への貢献に努めている。