「平和」「公平」そして「自然との調和」のある未来~世代間の視点~

メリーナ・サキヤマ

「生物多様性グローバルユースネットワーク(GYBN)」 共同創設者
MIDORI Prize Winner 2020

2011年から10年の節目を迎え、世界各国政府は、生態系の危機抑制を成功させようと交渉し、新たな世界的目標を定義しコミットを試みているが、時間との戦いに追われている。

この10年間で、私たちは、気候と生物多様性に関する危機に対し、更なる知識、ツール、意識を得て、協調的な行動をとってきている。しかし結果としては、京都議定書、ミレニアム開発目標、愛知目標など、多国間において合意した目標のほとんどを達成できず、大変残念な結果となっている。この大きな政治的失敗は、生態系や物理的システムの健全性を著しく低下させ、気候と生物多様性の危機を悪化させる一方だ。

一方同じ10年間で若者による運動は拡大し力をつけ、意思決定に参加し、自分たちの権利を主張することを可能にしてきている。子どもや若者は、いまだに疎外され、世界のほとんどの国で脆弱な状況に置かれてはいるが、力の不均衡に対処するための政策や法的・制度的な取決めが近年開発され、若者が自分たちの考えを発言し、自身の生活に影響を与える決定に、関わることが可能になってきている。

このような状況の中、生物多様性グローバルユースネットワーク(GYBN)は、生物多様性に関するガバナンスへの若者の行動のエンパワーメント、動員、調整のための集団的な取り組みを進めるため設立された。10年間に渡り、若者が中心となって生物多様性に貢献し、今では世界145カ国以上100万人以上の若者が参加する運動に成長した。

GYBNは、未来の生物多様性について若者の声と視点をまとめるために、協議プロセスを重ねている。自然とのつながりを取り戻し、多様性を称え、その恵みに感謝し、私たちが自然の一部であることを忘れずにいる世界を築きたいと、130か国以上からの若者の代表が集まり、活動している。

若者たちは、自然と人々のための公平性、持続可能な生活、私たちの生命維持システムである生物多様性の完全性を維持する世界を切望している。(www.gybn.org/policy)

COP10 Youth席
生物多様性条約第10回締約国会議 ユース席にて

世界の若者たちは、私たちの生活と未来を脅かす生態学的危機が、現在の経済社会システムの根底にある不平等と力の不均衡と、深く結びついていることを理解している。さらに、これらのシステムは、不平等を悪化させ、公正で持続可能な未来に向けた進歩を妨げる価値観、信念、原則により成り立っている。

最近のIPBESによる「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」によると、価値観と行動、不平等、保全における正義と社会的包摂、消費と廃棄物の削減、教育と知識の共有、豊かな暮らしについての多様な認識など、重要なポイントについて努力することで、持続可能性に向けた変革の可能性は高まることが示されている。

この理解に基づき、若者たちは、短期的で即効性のある解決策は、現代社会で主流となっている値観や原則に根ざした深い社会的葛藤に対処するための答えではないとわかっている。

生物多様性条約第11回締約国会議にて

世界の最大の問題は、現在まで続く歴史的なルーツを持つ根本的な不平等に由来する。この問題の解決には、価値観、原則、行動、制度、政治、法制度、経済制度に至るまで、深遠で体系的な社会全体の変革と社会正義の揺るぎない追求が不可欠だ。

2020年は、この変革と未来のためのビジョンに向け、全世界で、支援を募る年となるはずであったが、実際はそうはならなかった。人間社会は、私たち自身によりもたらされた生態系の劣化による世界的なパンデミックによって破壊され、人類は今、瀬戸際に立っている。このまま壊していくのか、あるいは立て直すのか?価値観、原則、習慣を変えることへの抵抗を克服し、平和、公平、自然との調和のとれた未来のビジョンに向かって動き出せるだろうか?

政府、企業、機関はいまだに麻痺しており、変革に向けて歩みを進めることに消極的である一方、若者たちは自分たちの未来にオーナーシップを持ち、模範となる行動を取っている。#MeToo(ミートゥー)、#BlackLivesMatter(ブラック・ライヴズ・マター)、Fridays For Future(フライデー・フォー・フューチャー)、その他多くの世界的な運動は、創造性と集団行動を駆使して、地に足のついた変化をもたらし、実際に力と責任と資源を持っている人たちに、この生態学的危機に取り組むためのコミットメントと行動を促している。

私たちはどのようにしてこの運動をサポートできるだろうか?

  1. 世代間の対話や議論に参加し、若者の代表者、若者によるグループ、組織を集めて、彼らの見解や考えを発信する。
  2. 若者が自らの行動のオーナーシップを持ち、アイデアを実行できるように、若者主導のイニシアチブを財政的に、あるいは物資を供給し、支援する。
  3. 意思決定、計画、実施プロセスへの若者の完全かつ効果的な参加を促進する。
  4. 若者の権利と世代間の公平性(世代間と世代内の公平性と正義)を尊重し、実現すること。若者に対する、形だけの平等主義、操作、適切な報酬を支払わずに彼らの労働力を利用することをやめる。

世界中の若者たちが率先して、進むべき道を示している!

この運動への皆さまからの参加をお待ちしています。

https://fornature.undp.org/content/fornature/en/home/open-letter.html

www.gybn.org/policy