「イオン ふるさとの森づくり」35周年特別対談

なぜイオンは「里山」をつくるのか

〜イオンが描く「人と自然が共生する未来」〜
建築家 藤本壮介 氏 とともに

1991年に始まった「イオン ふるさとの森づくり」は、2026年で35周年を迎えました。店舗の敷地にその土地に自生する樹木を植える活動から始まった取り組みは今、地域社会と一体となって自然を再生する「里山づくり」という次なるステージへと進化を遂げようとしています。
今回、責任者 サステナビリティ担当の渡邉祐子が訪れたのは、新たな挑戦の第一歩となる千葉県多古町。ゲストに「2025年大阪・関西万博」会場デザインプロデューサーを務めた建築家・藤本壮介氏を迎え、建築と自然の融合、そして商業施設が果たすべき「現代の里山」としての可能性について語り合いました。

建築家 藤本 壮介氏
東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞「ラルブル・ブラン(白い樹)」に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。「2025年大阪・関西万博」では、会場デザインプロデューサーを務めた。

イオン株式会社 責任者 サステナビリティ担当 渡邉 祐子
1995年ジャスコ(株)入社。2014年イオンモール(株)イオンレイクタウン活性化プロジェクトを経て、2021年(株)OPA代表取締役社長に就任。 2025年3月より現職。

「イオン ふるさとの森づくり」35周年を迎えて

渡邉:
本日はイオンが里山づくりを進めている千葉県の多古町までお越しいただき、誠にありがとうございます。今回、藤本さんにお話を伺いたいと思ったのは、藤本さんの建築物とイオンのサステナビリティの考え方に通じるものがあると感じたからです。千葉県市原市の「Toilet in Nature」や福岡の太宰府天満宮「仮殿」など、私が見てきた藤本さんの建築は、無機質な建物に木や森といった有機的なものを巧みに取り入れていらっしゃいますよね。この「建築と自然の融合」が、環境を大切にしているイオンの思想と深く共鳴していると思いました。
イオンの理念を体現する環境活動の一つである「イオン ふるさとの森づくり」は、1991年に開始し、今年で35周年を迎えます。この森づくりは、単なる店舗の緑化活動ではなく、店舗が地域のコミュニティ拠点になることを目指す取り組みです。ショッピングセンターの開店時に、その土地に自生する樹木を種々おりまぜて、お客さまや地域の皆さまとともに植樹を行っています。現在、世界11カ国、累計約1,287万本、参加者数は延べ約130万人に達しているんですよ。

藤本:
35年もの長きにわたり、森づくりに取り組まれているとは、今まで存じ上げませんでした。本当に素晴らしい取り組みですね。お話を伺って、特にお客さまとともに、地域とともに取り組まれているということが非常に重要だと感じました。自分たち自身が参加することで、単なるお店から「自分たちの場所」という感じになりますよね。

渡邉:
そうおっしゃっていただけると嬉しいです。「イオン ふるさとの森づくり」は店舗を中心に進めていますが、実はイオンは事業活動を行う地域の枠を超えた森林再生にも取り組んでいるんです。これを担うのが、イオン環境財団です。イオンは1990年、日本で初めてとなる環境に特化した財団法人として、同財団の活動を始めました。最近の山火事をはじめ、自然災害や紛争・伐採などで失われた森林や防災林の再生、さらには生物多様性の損失を食い止めるための活動を行っています。例えば、万里の長城沿いでの植樹や、5カ年計画でのアンコールワット周辺の森づくりなど、自然と同時に文化遺産を守る取り組みも進めているんです。
こうした活動が始まって今年で35年。各地で植樹した木々は立派な森へと育ち、今私たちは、「木を植える」活動を今後どのように発展させていくかという新たなフェーズに入っています。そこでぜひお聞きしたかったのですが、自然と融合する建築を手掛けておられる藤本さんは、ご自身の建築のなかでの「森」というものをどのように捉えていらっしゃいますか?

藤本:
そうですね、僕の出身地は北海道旭川市の隣にある東神楽町という町なのですが、実家の裏には雑木林があって、小さい頃はよくそこで遊んで過ごしたんです。今振り返ってみると、自分が育った場所はすごく自然豊かな環境だったと思っています。その影響も大きいのか、僕の建築の原点には常に「森」があります。 建築というのは人工物を造る仕事なので、どうしても添え物のようにランドスケープを設計することが多いのですが、僕は、人間だけじゃなくていろいろな生物も含めて快適に過ごし、共に生きるうえでのモデルとして、「森」を強く意識して設計しているんです。
例えば、多くの方にご覧いただいた大阪・関西万博では、会場を取り囲む大屋根リングの中心に「静けさの森」を配置しました。建設当初は、効率性を重視してあそこを資材置場などに活用したいという声もあったのですが、早い段階から木々を植えて森を育成することで、本来の自然を作ることを貫きました。

渡邉:
本来の自然を作ることを貫かれたというお話、私たちの想いとも重なります。イオンの森づくりの特徴は、地域のお客さまと従業員が一緒に木を植えることにあり、それによって自然に対する関心が芽生え、意識や行動の変化へとつながっていくと考えています。美しい木々があるこの暮らしを次の世代につないでいくには、やはり企業だけが頑張ってもダメなんですね。お客さまにも植樹に参加していただき、1本ずつ植えることで、一人ひとりの心の中に自然に対する意識を持っていただきたいという狙いがあります。

また、植えるのはその土地に自生する木です。その地域の神社などに足を運んで、どんな木があるのかを調べ、自然と人間の共生の象徴である“鎮守の森”を目指して店舗の周りにお客さまと一緒に植えていきます。そういう意味では、人々が集まる拠り所としての森づくりということが重要です。お客さまとともに植えた木々が大きく育った結果「森の中のショッピングセンター」を実現する。それが、イオンの目印になる。イオンのショッピングセンターは森の中にあるのが当然の姿と考えており、「森があるっていうことはイオンだね。」っていうぐらいにしていきたい。そういう思いで活動を続けてきました。

藤本:
「森があるってことはイオンだね」、そのお話はものすごく共感します。看板などで企業のメッセージを伝えていくことも、もちろん必要なことではあると思うんですけど、それよりももっと直感的に企業のフィロソフィーや価値観のようなものが伝わるっていうのは本当にいいですよね。
実は僕も、地元の自然豊かな東神楽町の役場を数年前に作らせてもらったのですけど、建物がドーンと建っていて、その前面に駐車場があるっていうのが、典型的な北海道の建物の作り方なんですよね。ただ、それだとあまりに殺伐としているので、「歩いていたら森が見えてきた、森の中を歩くとそれが役場なんだよ」というような風景を作れないかと考え、建物の周りの敷地にたくさん木を植えました。10年、20年経つと、そこで育った子どもたちは、自分の町の役場は森なんだと思ってくれるんじゃないかという気持ちで作ったんですよ。

渡邉:
役場を「森の中を歩いていくとたどり着く場所」にしたという発想は、本当にすばらしいですね。その場所そのものが、町の価値観を伝えているように感じます。

藤本:
ありがとうございます。森の価値として、僕は最近いろいろなところで言っているのですが、今の都市やまちは人工物の比率が大きすぎるので、森とまちがもっと深く共存していくような場所を作っていこうと提案しています。特に最近の猛暑を考えると、物理的に気温を下げるのは森しかないんじゃないかなと。都市はコンクリートの壁とアスファルトの床でできているので、気温がさらにそこで増幅されていますよね。一方で森は、日陰の効果もありますし、蒸散作用もあります。それから木の足元には必ず土があるので、そこで人間はパワーももらえると思っています。

森づくりは、次なるステージへ

渡邉:
まさにおっしゃる通りで、私たちも都市やまちにおける森の重要性を痛感しています。イオンでは事業活動と連動した植樹活動として、これまで店舗の敷地内に木を植えてきました。しかし、今はただ植えることだけではなく、地域と一体となって自然を維持・回復していこうというフェーズにシフトしています。そうして里山づくりを始めまして、その第一弾がここ、多古町なんです。今日、わざわざ多古町までお越しいただいたのは、藤本さんにこのイオンの里山の様子を直接見ていただきたいと思ったからです。
今まで私たちは、主に建物の敷地の中で植樹活動をしてきました。でもそれだけでは、激しい気候変動と環境悪化のスピードに対応できない、イオンが目指す未来は実現できないという危機感がありました。そこで、店舗での植樹から活動を広げて、地域全体で取り組む里山づくりを2026年春から始めたんです。

藤本:
なるほど、敷地内での植樹の次の段階として、地域全体を巻き込んだ里山づくりへと展開されたということなんですね。ちなみに、その第一弾としてこの多古町を選ばれたのは何故なんですか?

渡邉:
里山づくりは私たちにとっても初めての試みでもあるため、まずは私たちが継続的に関わって手を入れられる場所として、イオン本社のある千葉市から比較的アクセスの良い多古町が候補にあがりました。多古町は、圏央道の開通や成田空港の機能強化などによって交流人口の増加も見込まれると同時に、とても豊かな自然が残る地域です。けれども、この素晴らしい環境を維持・継承していくにはさまざまな課題があるとも伺っています。そこでイオンとしては、小売業としての強みを活かし、グループ店舗を通じた商品販売や、人が集う場をつくり出すことなどを通じて、事業活動を通じた地域貢献ができないかと考えたのです。

藤本:
そういった背景があったのですね。今私たちがいるこの旧興新小学校があるエリアと、さきほど拝見した田園や森のエリアが緩やかにつながっているのがよく分かります。対談前に校庭を少し散歩したのですが、緑豊かな環境の中に歴史ある木造小学校校舎が溶け込んでいて、本当に素晴らしいロケーションだと思いました。思わず写真を何枚も撮ってしまったのですが、こちらの建物は映画やドラマの撮影にもよく使われると聞いて深く納得しました。この風景はぜひ大切に保全していただきたいですね。

渡邉:
ありがとうございます。私たちもこの風景を守り育てていきたいと思っています。というのも、私たちの事業そのものが自然資本から成り立っているからです。それは食品の原材料だけでなく、お客さまの暮らしを支える衣食住の全ての商品に当てはまることであり、自然の恵みなしには何一つご提供することができないと考えています。
そして、ふるさとの森づくり35年目という節目を迎えたことを機に、事業活動による生物多様性への影響をしっかりと把握し、その「めぐみ」の最大化と「いたみ」の最小化を実現していくため、生物多様性方針を改定するとともに、具体的な行動レベルで取り組みを加速していくことを宣言しました。気候変動をはじめ、地球規模の課題が深刻化し、世界で「ネイチャーポジティブ」の重要性が高まるなか、私たちは90年代から続けてきたサステナビリティの取り組みの経験と蓄積を活かし、グループ一体となって取り組みを加速していきます。

藤本:
暮らしに深く根ざすイオンの一つひとつの試みは、きっと大きなインパクトを持って、日本社会や地域の方々のマインドを変えていけると僕は思っています。イオンはそれだけ日常的に人々の生活に密接し、支えているインフラですし、人が日々通う場所でもありますよね。しかも、それが全国あらゆる場所にある。この巨大なインフラから「自然を大切にしていくんだ」というポジティブなメッセージを社会に向けて発信していけるのは、とても希望に溢れている気がします。

渡邉:
はい、おっしゃる通りです。だからこそ、こうした活動をより対外的にアピールして、世の中に「ネイチャーポジティブ」な潮流を作ることも大切だと考えるようになりました。イオンのメッセージをたくさんの人に知っていただき、「自分も参加してみたいな」と思ってもらえる状態を目指したいです。そのためには、言葉だけでなく、実際にイオンの森や里山を見ていただく、肌で感じていただくことが最も近道だと思っています。地域住民の皆さま、お客さま、お取引先さまなど、あらゆるステークホルダーの方々に、自然を守るイオンの仲間になってほしいと願っています。

藤本:
そうですね。ただ、これが単なる慈善事業みたいに見えてしまうともったいないなと思います。森づくりと里山づくりというのは、イオンの事業の根幹を支えるものであることがしっかり伝わるといいですよね。自然をちゃんとしていかないと世の中が平和にならないし、イオンの商売も成り立たないのだという本質的な部分です。「なぜイオンが里山づくりをしているの?」という疑問に対して、丁寧に答えていくことがこれから必要になってくると思います。

渡邉:
はい、そこはまさに積極的な発信をしていきたいと思っています。私たちは、木を植え続けてきたことと同時に、地域社会とのつながりを深めてきた積み重ねがあります。その土台があるからこそ、里山づくりも、地域の皆さまとともにつくる活動として広げていくことができるのだという、そうした私たちの想いもあわせて伝えていきたいです。

里山づくりの可能性をひらく

藤本:
これまでのお話を聞いていて思ったのですが、こうして本物の里山をつくる活動も素晴らしいのと同時に、全国のショッピングセンターが「現代の里山」のようになるとさらに面白いですね。建物の外装、内装、駐車場、あるいはショッピングの体験も含めて、里山というコンセプトでデザインしてみるんです。リアルな里山づくりの活動が、イオンの店作りに直接フィードバックされるようなイメージです。リアルの里山もつくるし、お店も里山にすれば、「イオンといえば里山だね」という風になるかもしれない。これが全部つながっていくと、世の中に対してすごい納得感が出るような気がします。
そもそも里山というのは、昔から食べ物や何かを作る材料が生み出され、人々のコミュニティやコミュニケーションが生まれる場所でした。その役割を、現代ではまさにイオンが果たしているわけです。「イオンが現代の里山なんですよ」というストーリーは、すごくいい気がしますね。
イオンのお店は、全国どこでも同じものが手に入るということが大きな強みだと思いますし、ひとたび建物の中に入れば、楽しい世界が広がっています。ただ、建築の視点でいえば、建物の中と外は壁でバシッと区切られている。そのことが、ともすると「地域の外からもってきた箱」のような印象につながっている部分もあると思います。でも、里山というのはまったく逆の発想であり、その地域固有のものですよね。地域ならではの植物があるし、地域ならではの食べ物や伝統、文化がある。ですから、建築のインタフェースという点では、公園のような場所を充実させたり、駐車場そのものがもっと緑の森になったりすると、地域の人から見て「この場所のことをすごく考えて作ってくれているイオンだな」となると思います。これは結構大切なポイントです。その場所から生まれ出たイオンであり、里山であり、地域に根ざすものとして、コンセプトを語りなおす。地域から生まれ出てくるものをどんどん取り入れたいとなれば、イオンのイメージは大きく変わるし、先ほどのリアルの里山体験も、さらにすごく楽しいものになりそうですね。

渡邉:
「リアルな里山」と「現代の里山としてのイオン」、その両方があって成り立つというお話はすごくいいですね。とてもワクワクします。

藤本:
あとは、建築設計って建物の設計であると同時に「体験の設計」でもあります。その視点で言うと、木を植えることももちろん大事なんですけど、人はどう自然を体験すると効果的なのかという視点が大切です。都市の中でこんなふうに森の体験をしたことなかったなとか、こういう体験ができると豊かだなという体験のデザインですね。
建物の内と外を切り分けないで、つながりとして考えていく。そうすると、例えばお客さまが車で来たときに、周りの森を見て、そのままシームレスな体験としてイオンの建物の中に入っていく。ここまでの体験デザインがあるといいなと。

車を止めるところでグリーンの体験が途切れてしまうと、もったいないなと思うんです。今、モールの中は「街」としての楽しさやワクワクがありますよね。そこで駐車場にはグリーンや森の要素を取り入れるといいのではないでしょうか。駐車場の森を通り抜けたら、イオンモールの街の中に入るイメージです。これだけ厳しい気候になってくると、「木陰を作る」ことは本当に大事で、木陰は地域の人々の生活にとって必要不可欠な存在になると思います。
もちろん、こうしたことを実際にやろうとすると、落葉とか虫とかがおそらく嫌われます。でも、自然豊かなものっていうのは、大体面倒くさいんですよね(笑)。でも、これからの時代はその面倒さが逆に価値になると思います。なので、手間をかけて手入れをする。それによって生まれる心遣いだったり、いい時間の感覚だったりが、より豊かな体験になると思うんです。自然って必ずしも人間の思う通りにいかないので、いろいろなことをやってあげなきゃいけない。だからこそ人間の想像力が膨らんだり、その時々の風景がより深く記憶に定着したりということがあるわけです。

渡邉:
確かに、今は建物の中でいかに楽しんでいただくかということを主に考えている傾向はあるかもしれません。藤本さんがおっしゃるように、店内まで来る時のワクワク感と、帰る時の後ろ髪を引かれるような余韻までお客さまの気持ちを考えて、敷地全体をデザインするという視点は非常に大事だなと思いました。面倒さが価値になるというお言葉も響きました。
実は今年、既存の店舗の駐車場40~50台分くらいの区画で、アスファルトを剥がして土に戻し、地域の皆さまと一緒に木を植えるという試みを行ったんです。これは、これまでイオンが作ってきたふるさとの森とは違う、人が集う場としての森づくりをしていきたいというコンセプトに基づくものです。
今後も従来の形とは違う、こうした新しい森づくりを各店舗に拡げていきたいと考えています。森の意味や意義を、お客さまにもっと日常の中で感じていただきたいですし、藤本さんのおっしゃる通り、駐車場の暑さを緩和することも急務の課題ですね。

藤本:
それは素晴らしい取り組みですね。今まで建物の中の体験設計だったものが、敷地の中の体験設計になって、さらにそれが地域の中での体験設計になっていくというふうに、同心円状に広がっていくといいですね。そうなるともう体験設計っていうのは、一時的に非日常を体験して帰るだけのものではなくて、本当に日常になるわけです。地域に密着して、共に地域の環境とコミュニティを作り上げているという感じまで持っていけると素晴らしいですし、まさに今回の里山づくりは、そこに向けた大きなチャレンジですよね。

森づくり・里山づくりが生む、新たな価値

藤本:
例えば、今までは公園に行くことと、イオンに行くというのは、別々の目的、別々の行動だったかもしれないですけど、これが合わさると本当に面白いですよね。イオンに行くことと公園に行くことがイコールになる。そうすると「緑のいっぱいある公園に遊びに行こう」とイオンに来ていただける。暑い時だったら建物の中で涼めるし、季節のいい時だったら外で子どもたちが遊べるし、いいとこ取りができます。
そこにさらに、地元の人たちが自分で植えた植物で「自分たちの緑の公園」として愛着を持ってつながっていたり、緑の公園の要素が建物の中にも入ってきたりすると、より緑豊かな里山のイオンというものが、地域の方々の生活の中に感覚として深く記憶されていくというか。「イオンに行く=緑豊かなところに行く」みたいな構図ができあがるのではないでしょうか。

渡邉:
日常の中の安らぎだとか憩いだとか、イオンはまさにそういうものも提供できる存在でありたいと思っています。特に今は本当に暑くて厳しい気候になってきていますから。35年植えてきた木々が成長して、今ようやく地域の人々の暮らしの中で木陰を作っていく、なくてはならない存在になってきたのかなと感じています。
イオンのふるさとの森づくりでは、地域に自生する木を植えています。その土地本来の植生を調べて、店舗ごとに数十種類の樹木を植えるのですが、その種類や割合はそれぞれの地域で異なるので、いわばお店ごとの「オーダーメードの森づくり」なんです。 いま、そうして育った森で進めているのが、地域のお客さまや子どもたちと一緒にふるさとの森に行って、蝶などの虫を探す「いきもの調査」という活動です。木々が育つことにより生態系が回復し、その地域にいるさまざまな動植物などが戻ってくる。この「森の価値」をみんなで再認識しようというものです。

藤本:
いきもの調査、すごくいいですね。今や日本の生活インフラを支える巨大な存在になっているイオンが、そうやって店舗の風景や駐車場のあり方、木の維持管理のあり方などを変えていくと、我々社会全体の固定観念が変わると思うんです。
今はみんな「樹木を植えるのは手入れが大変だ」とか、「経済的に不合理だ」みたいな言い訳をして、なんとなく後回しにしている。それをイオンの規模感で実践していただけると、日本人の先入観がガラッと変わると思うんです。例えば、「駐車場に木がないのはおかしいでしょ」という世の中にですね。商業施設にしても公共施設にしても、森の中にあるのが普通でしょという風に、根本的な価値観の転換が起こる。これまでの「常識」が覆って、「ええ?まだそんなこと言っているんですか。もう時代は変わったんですよ」みたいなことを、イオンならできると思うんです。ぜひイオンのポテンシャルと規模感を活かして、日本を変えてください。全国のショッピングセンターが里山になり、駐車場が森になれば、間違いなく世の中が変わりますよ。

渡邉:
力強いお言葉、ありがとうございます。店舗で育むふるさとの森と、地域に広がる里山。人々がその間を行き来し、自然の恵みを日々の暮らしのすぐそばに感じられる環境を、私たちは大切にしたいと考えています。今年改定した生物多様性方針には、“1モール、1里山”を合言葉に、里山の再生活動推進を全国へ広げる想いを盛り込みました。
今、イオンが地域に提供する価値は、大きく変わっていくべき時期にあります。事業を通じて、この美しい地球環境をどのように次の世代へ受け継いでいくのか。これまでお客さまや地域の皆さまとともに続けてきた植樹をはじめとする環境活動を、私たちはここから本気で加速させていくことで、より一層、地域のお役に立ちたい。そして、その実現をお客さまと一緒に目指したいと心から願っています。
そのために、私たちには、まだやらなければならないことがたくさんあると本日の藤本さんとの対話を通じて、改めて実感しました。森が持つ力、そして自然の大切さを、より多くの方に知っていただき、活動に参加していただける機会をさらに広げていきたいと思います。お客さまと一緒だからこそ、未来はもっと良くできる。私たちはそう信じています。これからも皆さまのお力をお借りしながら、次の世代への責任をしっかりと果たしていきたいと思います。藤本さん、本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。