財務担当からのメッセージ

イオンのDNAである事業会社の
自主自立経営を尊重し
グループ全体のさらなる成長と
変革を実現する

財務方針、資金調達方針

当社では、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重点施策として位置づけ、健全な財務バランスを維持しながら、資本の効率性を高めることを財務上の基本方針としています。また、事業によるキャッシュ・フロー創出力の最大化を図りながら、ALM、財務状況、金融市場環境などを総合的に判断し、最適な方法で資金調達を行っています。

中期経営計画:投資計画

中期経営計画(2021~2025年度)においては、2025年度に営業収益11兆円、営業利益3,800億円、営業利益率3.5%を目標としています。また、ROEは7.0%以上、ハイブリッド社債・ハイブリッドローンの資本性を考慮したネットDebt/EBITDA倍率は2.5倍以下を目指しています。

当社の営業利益率やROEが低位に留まっている理由については、中核の小売事業の不振が一因であると認識しています。中期経営計画では「5つの変革」を掲げ、デジタル、商品、サプライチェーン改革などにより小売事業の収益性向上を図り、グループポートフォリオにおける小売の利益シェアを高めていきます。年間の投資額は、4,000億~4,500億円程度とし、投資配分については、これまでの店舗偏重からデジタル、商品・サプライチェーン及び当社の強みである海外、特に成長著しいアセアン・中国へ優先的にシフトしていきます。一方、投資実行度・投資効率のモニタリングを通じて戦略投資を着実に推進するとともに、必要に応じて機動的な見直しを行い、財務規律を高めてまいります。

当社は、グループ会社の戦略的整理・撤退、事業ポートフォリオの変革も図ってきました。近年では、業績の厳しかった上場子会社ツヴァイの株式を売却したほか、ミニストップにおいては韓国、フィリピン、中国・青島での事業から撤退しました。また、非上場子会社では、今後の成長が見込めないと判断したローラアシュレイ、ザ・ボディショップ、クレアーズなどの事業を整理しました。一方、中四国エリアを中心にスーパーマーケットを展開するフジや、100円ショップのキャンドゥを連結子会社化するとともに、ウエルシアが中四国エリアのドラッグストアのププレひまわりを子会社として傘下に収めるなど、事業ポートフォリオの入れ替えや進化を図り、グループの効率性を高めてまいりました。グループの新たな成長の柱と位置づけているデジタル事業の強化に向けては、英国Ocado社と提携し、2023年には最先端のAI及びロボティクス機能を導入したカスタマー・フルフィルメント・センターを起点とするオンラインマーケットを稼働し、デジタル売上の飛躍的成長を目指しています。さらに、出資・提携関係にある米国Boxed、ドイツSIGNA Sports United GmbHとの連携・協業も含め、B2CのみならずB2Bの領域においても事業成長を図ってまいります。このような持続的成長による企業価値向上に資する事業ポートフォリオの変革を積極的に進めるためには、財務基盤の強化が欠かせないと考えます。

株主配当方針

株主還元については、イオングループの中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重点施策と位置づけ、連結業績を勘案した配当政策を継続することを配当方針に掲げています。配当水準としては、前年以上を維持しつつ連結配当性向30%を目標としています。情報開示の充実に加え、対話を通じて株主や投資家の皆さまにご理解をいただけるよう努力するとともに、着実に実績を積み上げ、将来利益に対する期待値を高めていきたいと考えます。

財務面においてもサステナブル・ESG経営を追求

当社は、1960年代からいち早く環境問題に注目し、店舗での植樹活動の推進、食品廃棄物やレジ袋の削減、CO2の削減や持続可能な商品調達の推進などに取り組んできました。環境・グリーンに対するニーズはますます高まっており、従前の方針通り、すべてのステークホルダーとともに、事業活動を通じて環境・社会課題の解決を目指すサステナブル経営を積極的に推進していきたいと考えています。財務運営においても、環境・社会課題への取り組みを進めており、イオンモールでは、2021年11月に脱炭素社会の実現に向けたサステナビリティファイナンスへの取り組みとして、あらかじめ定めたサステナビリティ目標の達成度合いに応じて条件が変動するサステナビリティ・リンク・ボンドを機関投資家向けに発行しました。2022年4月には、同社のESGへの取り組みを地域の皆さまと一体となって推進するため、国内初となる個人投資家向けのサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しました。さらに、2022年秋には、親密な金融機関等とパートナーシップを組み、国内最大規模のオフサイトコーポレートPPA*に参画する予定です。発電所の設置・運営とファイナンスをパートナーに担っていただくことにより、当社グループは安定的かつ効率的に再生可能エネルギーを調達でき、脱炭素の早期実現が可能となります。今後も「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指し、資金調達や投資など財務面においてもサステナブル・ESG経営を追求してまいります。

* 発電事業者と電力需要家があらかじめ合意した価格及び期間における再エネ電力の売買契約を締結し、
オフサイトで発電された再エネ電力を送配電事業者の送配電設備を利用し、電力需要家に供給すること。

グループCFOとしての役割

コロナの影響が落ち着きを取り戻し、社会活動が正常化に向かいつつありますが、コロナ感染拡大から2年半の間、地球温暖化、物価上昇、不安定な国際情勢など、あらゆる社会課題が地球規模で押し寄せてきました。この大きく変化する社会環境下において、グループの各事業・各社における将来に向けた問題点が明らかになってきました。これまでイオングループは成長戦略を旨とし、実際にそれが過去の成長と変革の原動力となってきました。一方、財務面においては、有利子負債や資本効率の面で必ずしも十分な財務体質が構築できているとは言えないと認識しています。

グループCFOとして優先すべき課題は、足下の環境変化や各事業・各社の状況、見通しを踏まえ、着実に利益成長を遂げながら事業ポートフォリオの入れ替えや有利子負債のコントロールを強化することで、より強固な財務基盤を確立することと考えております。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、IR活動では、自ら先頭に立ち、当社の戦略や方針を理解していただけるように、直接対話などを継続的に実施してまいります。

今後ともグループCFOとして、イオンのDNAである事業会社の自主自立経営を尊重しつつグループ最適化を重視しながら、グループ全体のさらなる成長と変革を実現するとともに、株主価値の向上に努めてまいります。

執行役

財務・経営管理担当

江川 敬明

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