財務担当からのメッセージ

グローバル展開の加速、
キャッシュ創出力の強化を通じて
さらなる成長ステージを目指します。

取締役 兼 代表執行役副社長
財務・経営管理担当 山下 昭典

多様な収益構造を一元的に管理

イオンは小売、ディベロッパー、金融、サービスの4つの事業を柱に、世界14カ国で幅広いビジネスを展開しています。前身・岡田屋以来の祖業である小売事業は今日でも収益面で最大のウェイトを占めていますが、一方では新たなビジネスも着実に成長し、イオングループ発足後の30年間に事業ポートフォリオは大きく変貌を遂げています。例えば、2018年度の営業収益8兆5,182億円のうち、アセットを活用したビジネスである総合金融、ディベロッパー事業の取扱高を営業収益に置き換えると、全社の事業規模は約20兆円になります。このように主要4事業が相異なる収益構造を擁することが、企業集団としての大きな特徴となっています。
当社では営業総利益とキャッシュ・フローを軸に、グループのこうした多様な収益構造をコントロールしています。また、経済のグローバル化の進展に対応するため、会計基準も海外子会社を中心にIFRSの導入を推進する一方、現地の最新の政治・経済・社会情勢の把握に努めています。例えば税制は国ごとに異なるため、経理ガバナンスの中に、ローカルなコンプライアンスの視点が反映されなければなりません。さらに資金の調達においては、各国の金融市場動向に対する理解が欠かせません。こうした観点から当社では、中国本社、アセアン本社との3極体制で、感度の高いリスク認識に基づく、より実効的なマネジメントを追求しています。
またイオンでは、上述の事業ポートフォリオを勘案し、いわゆる親子上場の形態をとっています。すなわち、純粋持株会社がグループ全体のガバナンスを統括、各事業セグメントの主要な上場子会社が子会社の監督にあたっています。資本市場に対してはセグメント単位の開示を行う一方、上場子会社は各社の責任で情報を発信しています。この2階建てのシステムを通じて、よりきめ細かい開示および投資家との対話が可能になると考えています。

戦略的にグローバル化を加速

イオンは1980年代前半から戦略的な形でマレーシアやタイなどへ海外進出を図ってきました。現在はその第一弾、第二弾のビジネスの持続的な成長を図るとともに、この2年間注力してきた小売、ディベロッパー、金融、サービスの4つの事業が一体として展開するショッピングセンターモデルを成長軌道に乗せることが喫緊のテーマとなります。すでにアセアンに続いて中国が黒字化、2018年度の営業利益はグループ全体の16.8%、総合金融事業では半分近くを海外が占めるに至っています。今後、海外の比重がさらに高まるにつれ、経営資源の配分先も海外によりシフトし、また資金の調達方法も為替や金利の動向によってタイムリーに、世界各国から最も良い条件で、安定的にかつシームレスに調達することになるでしょう。
こうした海外シフトを進めるにあたっては、いくつかの課題があります。第一に、デジタル化の加速と、統一的なインフラシステムの構築です。例えば、グループの間接部門を集約したシェアードサービスを海外に設けることも、選択肢の一つになるでしょう。また現状では、地域ごとに異なるERP(※1)ソフトが採用されており、各社の状況を一度に俯瞰することが難しくなっています。ERPの標準化は、グローバルなデータの共有・分析、問題点の洗い出しといったプロセスの大前提となります。
第二に、さらなる権限委譲による中国・アセアンの機能強化です。「3極」が対等な資格で迅速な意思決定を行う体制を確立したうえで、上述のデータを共有し、管轄子会社のマネジメントに活かしていくことが大切です。
第三に、現地子会社の組織強化です。ひと口にアジアといっても、現地でのビジネスの歴史、市場の成熟度など国によって多種多様であり、こうした要因をしっかり見極めたうえで最適な組織運営、人材戦略を進めていく必要があります。特に言葉の壁を乗り越え、日々の業務を動かすローカル社員とコミュニケーションすることは、バリューチェーンの実効的なマネジメントに不可欠です。
当社では今後2~3年を、来たるべき成長ステージに向けた基礎づくりの期間と位置づけています。将来を見据えて必要な施策を国内外で大胆に実施していきます。

(※1) Enterprise Resources Planning:ヒト・モノ・カネ・情報など、企業経営に不可欠な資源要素を一元管理するための基幹系情報システム

キャッシュ・フロー創出力の強化

イオンでは事業セグメントごとの財務諸表に基づき、フロー・ストック両面でグループの事業の現状をきめ細かく分析しています。そのプロセスで重要な指標となるのがキャッシュ・フローの創出力です。有利子負債の水準との比較で十分な現預金の確保は、収益力や財務の健全性を示す有用な物差しです。特に小売の中でも国内で成熟期を迎えたGMS、SM事業については、担当役員と緊密に連携のうえ、キャッシュ創出力のさらなる向上に向けて、経営資源の集中的投下を図っています。
当社がキャッシュマネジメントで特に重視しているのは、商品取り扱い時の仕入れから販売のタイムラグ、すなわちキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の管理です。また、各国の金融政策や国際情勢の影響による為替相場の変動も常に考慮に入れています。
他方、当社の自己資本比率は同業他社に比べて低くなっています。これは買掛金によるキャッシュ・フロー増加を活用した財務戦略によるものですが、決して満足できる水準ではありません。今後も適切なキャッシュマネジメントに努めつつ、本業の収益力強化による利益剰余金の着実な積み上げを通じて、自己資本のさらなる充実を図る方針です。

「人財」の力でさらなる成長ステージへ

イオンの財務戦略を支えているのは人材の力です。約300の事業会社のCEO、CFOは、グループ経営を支えるかけがえのない人的資本を形成しています。これらのアセットを的確に評価し、人材ポートフォリオ管理の手法により適材適所の起用を進めていくことは、次世代リーダー育成の観点からも重要な意味を持ちます。
リーダーには実に様々な資質が要求されます。例えば金融事業の海外3社を立ち上げたのは、いずれも求心力に溢れた、創業者タイプのリーダーでした。後任の人々はそれだけ高いハードルに直面したものの、グループ内での経験などを活かして立派に事業を引き継ぎ、成長路線を堅持してきました。こうしたスキルやノウハウが世代を超えて脈々と継承されていること、世界14カ国・約300社の舞台が貴重な学びの機会を提供してくれることが、イオンならではの強みといえるでしょう。
イオンには、時代の変化に積極果敢に挑む「人財」の力、最適なガバナンスのあり方をゼロベースで考えられる柔軟な組織文化があります。今後とも当社は、事業会社の自律的な経営を尊重しつつ、グローバル展開の加速、キャッシュ創出力の強化といった施策を着実に推進し、グループ全体のさらなる成長を追求していきます。

以上

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