CFOからのメッセージ

革新し続ける財務戦略を実践し続け、グループの成長戦略を支えます。

取締役 執行役副社長
財務担当 山下 昭典

イオンの財務戦略における特徴

イオングループの財務戦略とは、ひと言で言えば、中長期的な企業価値向上に向け、資産と負債のバランスを取りながら利益を生む体質を構築することです。そういった意味では他の企業と同じですが、「大黒柱に車をつけよ」という岡田屋(イオンの前身企業の一つ)の家訓が、財務戦略においてもDNAとして脈々と受け継がれているのは、大きな特徴だと考えています。店の屋台骨を支える大黒柱に車をつけるがごとく、時代やお客さまの変化に応じて革新を続ける。この思想をベースに、成長に向けた資金調達戦略、不動産戦略、資金決済を進めてきた結果、日本初・業界初といった、前例のない財務上の取り組みを数多く実践することとなったのです。

例えば、資金決済においては、クレジット取引、ファームバンキングなど、常に業界に先駆けたモデルを導入してきました。企業と銀行間を通信回線で結び各種データの処理を行うファームバンキングは、今では一般的ですが、流通業界で初めて導入したものであり、公共料金の自動引き落としも業界に先駆けて導入しました。

また、資金調達においても、1974年の株式上場以来、その時々における財務規律に合致した調達方法を自ら開発してきました。2005年には20年債を起債し、2006年には、日本の事業会社としては初めて、償還期間が50年の超長期となるハイブリッド債を発行しました。この起債以降も、証券会社と共同でイオン独自の調達手法に取り組んできており、ハイブリッド市場をつくってきたのは私たちイオンであると自負しています。2000年にSPC(特別目的会社)を活用した開発型証券化による新規出店を行ったのも、日本初の試みでした。

このような新しい価値を生み出す遺伝子を私たちは受け継いでおり、この遺伝子を残していくことも私の重要な役割です。

イオンの財務戦略の考え方と不動産戦略

イオングループの財務戦略の基本は、資産と負債のバランスを取りながら利益を生む体質を構築することですが、具体的には小売を中心とするイオンにおいて、在庫の回転とキャッシュの回転、すなわち回転差資金を基準にしながら、不動産などの有形固定資産と固定負債のバランスを取り、成長戦略に資する財務戦略を実践していくことが不可欠です。

そのため、不動産戦略や投資戦略についても、財務規律を維持しながら、成長のための出店を維持していくために、非常に重要な役割を担っていると捉えています。イオンでは店舗開発と財務戦略が表裏一体となった活動を行うこととしており、開発部門と財務部門は常に綿密なコミュニケーションを行っています。

また、店舗の出店においては、土地も建物も自己資金、土地は借地で建物は自己資金、土地も建物もオールリースといった大きく3つの分類がありますが、イオンでは従来、出店する地域・市場の特性に合わせて、この3つのバランスを開発案件ごとに精査・検討しながら、全体のキャッシュ・マネジメントを実践しています。現在では、ディベロッパー機能をイオンモール(株)が主に担っていますが、基本的な考え方は同様です。2013年には、イオンリート投資法人が上場し、イオングループの資金調達手段の多様化を実現するとともに、物件の価値を向上させる活性化投資を計画的に行い、長期的に店舗の競争力を高める仕組みも構築できたと考えています。

イオンの合併(M&A)の考え方

イオンの成長の歴史は、合併の歴史でもあります。合併で大切なのは、双方のコミュニケーションと価値観の融合、すなわち「心と心の合併」だと考えており、それぞれの価値観を尊重し、優れたところを活かすべきだと確信しています。

地域企業との合併をはじめ、多数の合併を重ねてきたイオンは、経営が苦しくなった小売業の企業再建も数多く手がけてきました。1997年に会社更生法を申請し、その後グループ入りした(株)ヤオハン(現 マックスバリュ東海(株))は会社更生法申請から6年10カ月という当時最速で再上場を果たしました。また、2005年には(株)マイカルが7年前倒しで更生計画を完了、現在ではイオンリテール(株)の礎の一つとなっています。

私自身、これらの再生案件に先陣を切って取り組んできたのですが、このような際に、まさに「心と心の合併」が重要だと実感しました。イオン流を押しつけるのではなく、実際にそこで会社を動かす一人ひとりの従業員の価値観を尊重し融合していかなければ、合併は成し遂げられません。当時の再生にあたった合併先企業の従業員たちのことは、今でも戦友のように思っています。

グループガバナンスと財務戦略

イオンはこれからも成長に向けた取り組みに注力していきますが、現在のグループ体制を踏まえると、企業グループ全体のガバナンス、モニタリングが重要になってくると考えています。グループの事業は多岐にわたり、事業ごとにキャッシュの流れも異なるうえ、地域もグローバルに広がっています。これをモニタリングしながらガバナンスを効かせていくのがホールディングス財務であり、そのためには経営という視点、事業の中身までしっかりと熟知する必要があります。

そして、これらのガバナンスを維持し、成長に資する各社の財務戦略を推進していくためには、人材育成が鍵になります。各国・各地の資金需要や規制などにも精通しながら、各社のCFOが担う役割も大きくなってくることから、CFOの育成にも力を注いでいます。

ダイバーシティとデジタル化

上述したイオンの財務戦略に対する考え方の基本は不変ですが、今後のイオンの財務戦略を語るうえで、私は「ダイバーシティ」と「デジタル化」がキーワードになると考えています。

人間産業である小売業にとって、各国の状況は実際に体験しないとわからないことが多く、言葉の問題はもちろん、宗教や民族性の違いなど、多種多様な特性を持った人々とともに働くため、現地を熟知し、地域に根を下ろすことが成長の基盤にもなります。現在の、日本本社、アセアン本社、中国本社という3本社体制を基点に、CFOや財務担当者についても真の「ダイバーシティ」にチャレンジしていきます。

「デジタル化」については、財務面でも、今一度、本格的に取り組むこととしています。とりわけ、グループ内決済額も多額になっていることも踏まえ、決済分野でのさらなるデジタル化に向けた革新は必須で、決して遅れてはいけない分野です。小売業もディベロッパー事業も、デジタルをフックとした革命の時代はすぐそこに来ており、まさにイオンの革新の遺伝子を体現していきたいと考えています。

収益性とグループシナジー

2016年2月期は、スーパーマーケット・ディスカウントストア(SM・DS)事業や新たな収益の柱であるドラッグ・ファーマシー事業をはじめ、総合金融事業、サービス・専門店事業、そしてディベロッパー事業はそれぞれ増益となり、連結営業利益に大きく貢献しました。特に、SM・DS事業では、地域密着経営を推進するマックスバリュ各社が軒並み好調に推移したことに加え、新規連結企業であるU.S.M.Hが、同社グループ内における共同調達や共同販促企画の拡大、グループ本部機能の一部集約など、シナジーを創出する取り組みを進め、好調な結果を残すことができました。

しかしながら、グループとして営業利益・経常利益ともに増益であったにもかかわらず、当期純利益は大幅な減益となりました。その要因としては、業績が好調な子会社は上場会社が多い一方、イオンリテール(株)、(株)ダイエーなどの持分比率が高い非上場子会社の収益が低下したことが挙げられます。

当期純利益の改善のため、業績が好調なディベロッパー、総合金融事業などをさらに強化するとともに、収益の低下した子会社については、原点に立ち返り、徹底した現状分析と対策を実施することで、増益に転換させていく計画です。特に、GMS事業においては、新たな経営陣・組織体制のもと、「売り方改革」「商品改革」、そして既存店舗の「イオンスタイル化」を加速し、重点的に改革を進めています。

現在、従前から取り組んできたグループ構造改革により、多様な事業が利益を生み出せる体制が整っています。私たちは、引き続きグループ全体の収益基盤の拡充を図ると同時に、グループシナジーを着実に創出することで、利益拡大に努めていきます。

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