社長からのメッセージ

激しく変化する経営環境のなか、
地域とともに豊かな未来を目指します

 本格的なポストコロナを迎え、人々の往来がこれまでの活気を取り戻し、各地での催し物の復活やインバウンド需要の高まりを見せるなど、消費が活発化しています。一方で、地政学リスクの高まりや歴史的な円安など、昨年来の急激なインフレを背景とした物価高は、地域生活者の日々のくらしに大きな影響を与えています。お客さまの消費動向を見ると、生活必需品の出費を極力抑えようとする一方で、コロナからの解放感から旅行や外食などを復活させる「消費の二極化・メリハリ消費」の傾向が進んでいます。また、急激な物価高は、可処分所得が低い方ほど負担が大きくなる傾向にあり、社会構造による「富の二極化」も進んでいます。私たちは、この二つの二極化に代表される複雑な環境下で、お客さまにご納得いただける商品・サービスを提供していくことが必要であると考えています。

「5つの変革」の成果をもとにさらなる成長へ

 当社は、中期経営計画(2021~2025年度)として、「デジタル」「商品」「健康」「地域」「アジア」をキーワードとして捉えた「5つの変革」と「環境グリーン」の取り組みを通じて持続可能な経営を目指しています。

 近年、プライベートブランド(PB)が、ナショナルブランドの代替えではなく、新たな価値を備えた一つのブランドとしてお客さまの支持を得られるようになりました。また、店舗やオンラインなど購買チャネルの多様化によって、商品自体が持つ独自価値そのものが企業の競争力となってまいりました。小売業におけるPBの位置づけが一層高まるなか、独自のPB「トップバリュ」を持つ私たちにとってはこの領域に大きな機会があると捉えています。トップバリュは3ブランドを持ち、それぞれのコンセプトに合わせた新しいアイデアとワクワクを形にした独自価値商品の創出に注力することで、若年層をはじめ新しい顧客層へのアプローチが可能となりました。さらに、グループのスケールメリットの活用やサプライチェーンのあらゆるプロセスにおけるコストダウンの工夫により、PBは利益を確保していくうえで重要な手段の一つにもなります。お陰様でトップバリュの売上は、毎年2桁の伸びを示しております。

 デジタルの取り組みでは、“デジタル事業の拡大”と“店舗デジタル化による生産性向上”の2軸で成果が着実に出始めました。
 “デジタル事業の拡大”については、2022年度のネットスーパー事業の売上高が国内トップ水準の800億円規模となりました。2023年7月からは、新しいオンラインマーケット「Green Beans」を首都圏マーケットにおいて開始しました。朝7時から夜23時まで1時間単位で配送時間を設定でき、温度管理が徹底された品質の高い生鮮商品やカスタマー・フルフィルメント・センター出荷ならではの大容量商品など最大約5万品目で構成する品揃えは、共働きや子育て世代など、買物時間短縮の必要性が高く来店機会も限られるお客さまのニーズに応えるものです。
 “店舗デジタル化による生産性向上”の取り組みでは、お客さまご自身で決済まで完結できる「レジゴー」「Scan&Go」などのセルフレジの導入や、AIを活用した業務効率化など、デジタルツールを活用することよる人時生産性の改善を進めています。今後は、従業員のリスキリングの取り組みを強化することで、一人ひとりの業務の質を高めていくことを目指していきます。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)そのものを事業に

 気候変動や資源の枯渇、生物多様性の損失といった環境課題、社会課題に直面するなか、注力しているのがGXです。イオンの環境保全活動は1991年から行っている「イオン ふるさとの森づくり」の植樹活動にまで遡り、地域のお客さまとともに、買物袋持参運動や店頭資源回収、食品ロスの削減など様々な活動をグループ全体で展開してきました。これらの活動を持続的に発展させると同時に、従来の環境・社会貢献の観点に留まることなく、グループの多様な事業にGXの視点を組み込み、事業成長につなげていくことが必要だと考えています。

 商品領域においては、容器包装に再生プラスチックを使用したトップバリュ商品の展開を拡充し販売、店頭で回収、再商品化し、また購入いただくという循環モデルの構築を進めています。国内だけでも1万6千を超える店舗を有するイオンだからこそ、資源循環の拠点となり、回収、再生、販売につながる事業として実現できることと考えています。
 施設面においては、今後のEV(電気自動車)社会の到来を見据え、急速充電設備を整えておくことが、来店の利便性につながります。併せて、EVを介した家庭の余剰電力の買取りを通じて、地域の再生可能エネルギー(再エネ)を融通する仕組みを構築するなど、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを実践しています。また、イオンモール(株)では店舗屋上や駐車場に太陽光発電設備の積極的な導入による創エネルギー(創エネ)などによって、2025年までに国内のイオンモール全店舗の使用電力を100%再エネに転換してまいります。
  様々なステークホルダーの方々、とりわけ「地域のお客さま」とともに取り組むということがイオンのグリーン活動の特徴であり、重要な視点であると考えています。「イオンの店舗、商品やサービスをご利用いただくことが自然と環境に配慮した行動につながっている」、そうお客さまにも実感いただくことで、「環境=イオン」と第一想起され、社会全体のGXをリードしていくことを目指します。

グループをつなぐ理念とビジョン

 「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念を国内外グループ約57万人のすべてのイオンピープルが正しく理解し、将来に伝承していくために、ナラティブ(伝承文)の策定と共有を行いました。国籍も、言語も、価値観も異なる従業員がこの基本理念のもと共通の目的、価値観を共有しながら一体となることを目指しています。基本理念に記された考え方や姿勢を守るというイオンの意志表明として、また、ステークホルダーの皆さまにも積極的に発信し、ご理解いただきたいという想いから、イオンの基本理念のナラティブを定款に記しました。
 また、「21世紀の企業に生まれ、変わる」ことを宣言して社名を“イオン”としてから20年余りが経過しました。その当時にビジョンとして掲げた「夢のある未来」の意味を改めて問い直し、2022年10月、“一人ひとりの笑顔が咲く 未来のくらしを創造する”というステートメントとともに「イオングループ未来ビジョン」を策定しました。世の中が急速に変化するなかで、遠い未来においても人々の豊かなくらしを創造することができる企業としての存在意義を考え直そうという目的から、若手社員の議論、提案によって作り上げました。一人ひとりの多様性を尊重し、グループの力に変えていくためにも、若手社員が企業家精神を持って新しい提案ができるような風土づくりを進めていきます。

 イオンの基本理念には「企業集団として永続するために、お客さまを原点に絶えず革新し続けてゆきます。」と明記しています。革新し続けるということは、単なる改善活動を続けることではありません。革新とは、現在の事業に安住することなく、事業環境の変化に対する先見性をもってどこよりも早く、次の新たな一手を打ち続けることだと考えています。

 「イオンがあってよかった」とお客さまから思っていただけることを目指し、「イオンの成長が地域の豊かさにつながる」よう、これからも革新と挑戦を続けてまいります。

イオン株式会社 取締役 兼 代表執行役社長 吉田昭夫

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