財務担当からのメッセージ

市場との対話と株主政策の展開

 今年度、イオン(株)の株価は過去最高を更新しました。市況の影響も大きいと認識していますが、価格強化戦略やコスト構造改革の成果に加え、資本政策や事業ポートフォリオ変革の取り組みが好意的に受け止められている結果であると理解しています。 PERやPBRといった指標は高水準を維持しており、当社グループの成長性が評価されていると感じています。グループ各社が基本理念を拠り所として自主自立による経営規律に則り、コングロマリット・プレミアムを実現できている証左であり、特にインフレ局面においては、当社グループのスケールと変革の方向性が、より高い関心を集めています。実際に、説明会や証券会社が主催するカンファレンスを除いた個別IR 面談の件数をみると、2023 年度の148 件(国内102 件、海外 46 件)に対して、2024 年度は183 件(同103 件、同80 件)と増加しており、世界情勢の不透明感が増すなかで、日本を代表する内需・ディフェンシブ銘柄として特に海外投資家からの関心の高まりが顕著です。

 株主構成については、当社の理念や成長戦略に共鳴し、長期的にご支援くださる方々に株式を保有いただくことが理想的であると考えています。私が直接対話している機関投資家について申し上げると、国内の投資家からは、当社グループの規模や複雑な事業構造を見たうえで、どのように資本効率の向上を図っているか、具体的な説明を求められます。海外の投資家は、財務情報にとどまらず、ガバナンス体制やESG 対応に対しても高い関心を寄せており、非財務情報の充実と説明の透明性がますます求められていることを実感しています。

 非財務情報に関して私が特に重視していることのひとつが、「ガバナンスと説明責任」です。財務戦略の背景にある判断プロセスや組織体制の透明性を示すことは、経営の信頼性を高めるうえで不可欠であり、こうした情報を積極的に開示する姿勢が重要だと認識しています。もうひとつは「サステナビリティとの整合」です。ESG 評価機関を含むステークホルダーとの対話に向けて、非財務情報を含む統合的な説明責任を強化し、開示内容の充実・高度化を図っています。ESGや長期的リスクへの対応に関する考え方を開示することで、短期の利益だけでは測れない企業価値のあり方について、より深くご理解いただけると考えています。

 2024 年度には商品、物流、デジタルをテーマにIRデーを初開催するなど、機関投資家への開示の充実を進めました。アナリストの皆さまから多くのご質問が寄せられ、継続開催の要望をいただいています。

 個人株主については、当社グループの成長と業容拡大を見据え、100 万人(注)に迫るお客さま株主のさらなる拡大に注力すべきとの考えは従来通りです。当該地域を基盤とするGMS 事業やイオントップバリュ(株)の幹部も出席する株主懇談会は、多くの希望者の中から抽選でお招きしたお客さま株主のご意見を直接伺う貴重な機会です。今年度も例年通り11 月から12 月にかけて全国の主要都市での開催を予定しており、出席の申し込みは年々増加しています。個人投資家に対しての、お買い上げ金額に対するキャッシュバックや、長期保有株主へのギフトカード進呈などの株主優待については、従来は機関投資家から株主平等の原則に反するというご批判もありました。しかしながら、当社の株主優待は、株主との直接の接点を作り、長期的な株式保有と事業活動への参加の促進を企図しています。株主優待を通じてロイヤリティの高い株主が店舗やサービスを利用することで業績の向上につながり、結果として市場のボラティリティが高い局面においても株価の安定を支えています。

(注)イオンモールとの株式交換前

 私たちの株主政策は、お客さま株主の拡大・定着によって業績も株価も向上するユニークな取り組みとして機関投資家のご理解も進んでいると実感しています。

 株主還元方針については、前年以上を維持しつつ、連結配当性向30%を目標とする配当方針に変更はありませんが、 6 月には、多くのご要望を踏まえ、イオンモールの株主の方々が引き続き単元株としてイオンの株式を保有いただきやすいように、1:3 の株式分割を決定しました。下期の中間配当について、分割前の一株当たり年間20 円から分割後で一株当たり7 円、分割を考慮しない場合の年間配当金を41 円とし、増配計画をお示ししました。

 今後も、あらゆるステークホルダーに対して、当社グループの財務状況や事業戦略、将来に向けた取り組みについての誠実かつ透明性の高い情報提供と丁寧な説明に努めます。これにより、皆さまとの信頼関係を一層強固なものとしながら持続的成長・企業価値向上を実現できるよう、全力を尽くします。



執行役

財務・経営管理担当

江川 敬明

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