02 イオン九州株式会社
九州におけるお客さま、地域社会への貢献を通じて、従業員の幸福を実現し、地域に根差した九州No.1の信頼される企業となることを目指す、イオン九州。「いつも行く場所が、いつも行きたい場所になってほしいから。一人ひとりの暮らしにもっと。九州のみなさまと一緒にずっと。」を店舗コンセプトとし、お客さまのみならず、従業員も満足感を実感できることを信念としています。
※情報元:イオン九州株式会社HP「コーポレートガバナンス」ページ、イオン九州の経営理念より
イオン九州株式会社 人事総務本部
執行役員人事教育部長 兼 ダイバーシティ推進室長
工藤 洋子
kudo yoko
1981年に福岡ジャスコ株式会社(現イオン九州株式会社)に入社。
課長、副店長を経て、2003年に江北店の店長へ。
複数の店舗で店長を務めた後、2013年9月から南福岡事業部長、2017年3月からは人事総務本部執行役員人事教育部長兼ダイバーシティ推進室長として、ダイバーシティ推進プロジェクト活動や人材育成セミナーの構築、人材の配置など多様な人材の力が発揮できる企業づくりに力を注いでいる。
イオン九州について
イオン九州(株)の特徴や魅力、九州での役割についてお聞かせ下さい。
地域に密着した店づくりでNo.1の信頼を得る。
イオン九州株式会社は、九州における小売企業として地域に根差してまいりました。当社のトップメッセージは、「九州でNo.1の信頼される企業へ。『ずっと』を大切に、『もっと』を創造する」です。どうしたらNo.1の信頼を得られるのか、全従業員がそれぞれの立場で考え、行動しています。地域によってお客さまの食生活や習慣は異なるものです。チェーンストアである一方で、その店舗にしかない商品があるなど、地域の祭りやイベントに合わせてその店独自の売場づくりをしています。
2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」では、会社をあげて復旧・復興に取り組み、被災地域のライフラインとして店頭・移動販売車での販売を立ち上げました。また、仮設住宅団地への出店など、被災地域の生活インフラの一端を担いました。さらに、熊本県、熊本市との包括協定に基づく「復興WAONカード」の発行や被災地の子どもたちのサッカーグラウンド募金など、復興支援にも取り組みました。「お客さまの日々のいのちとくらしを支える」という小売業の使命を再認識し、地域の皆さまとともに歩む企業であり続けるためにも、今後も活動を続けていきたいと思っています。
ダイバーシティ経営に向けた取り組み
イオン九州(株)のダイバーシティ経営に向けた具体的な活動をお聞かせ下さい。
多様なアプローチと支援で新党を促す。
2016年3月のダイバーシティ推進室発足後、さまざまな取り組みを実施し、同年に女性活躍推進法に基づき、「女性が活躍している企業」として厚生労働大臣が認定する「えるぼし」マーク、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する「くるみん」を取得しました。九州の企業では初めてのダブル認定だったこともあり、マスコミなどに取り上げられました。
当社のダイバーシティの取り組みは、2014年から階層別に「経営者」「管理職」「管理職候補」「育児勤務者」「新入社員」の5つのプロジェクトチームを結成し、チームごとの課題に向き合う活動を続けてきました。2017年からはチーム編成を階層別から課題ごとに変更して取り組んでいます。人材育成面では、女性のキャリア意識向上とスキルアップを目指し、管理職手前の女性を対象とした「女性未来研修」を実施。子育て中の従業員の活躍支援では、イオングループの事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」の開園、部下の育児休業取得を促し、自らも仕事と育児を両立して私生活を楽しむ管理職「イクボス」の育成に取り組んできました。
ダイバーシティを推進する中で見えてきた課題と解決策
ダイバーシティを推進する活動から見えてきた課題はありますか?
メッセージを発信し続け、意識を変える。
ダイバーシティ推進に欠かせない福利厚生制度が整っているが故に、従業員の中には制度に依存して次のステップに踏み出そうとしない方たちもいます。ダイバーシティを進める中で、個を大切にする会社組織として、どのように生産性を上げていくのかが課題として見えてきたのです。育児勤務中の従業員で一定の仕事量しかしようとしない従業員には、育児中のママだからやれないのではなく、育児中のママでも仕事を頑張ってもいいのだよ、頑張れるのだよ、といったメッセージを発信し続けるようにしています。しかし、制度に依存した働き方に慣れてしまうと、なかなか次のステップに進むことができなくなってしまうのも事実です。これは女性に限った話ではなく、男性にも同じことが言えます。
これを解決する具体的な方法については現在模索中ですが、会社として様々なメッセージを発信することで意識を変えていこうとしています。なぜ、彼や彼女たちが次のステップに踏み出せないのか、その阻害要因を会社として解決しておくことが大事だと考えています。
ダイバーシティを行う上での苦労や工夫
ダイバーシティ経営の取り組みをしていく中で、苦労したことや工夫したことをお聞かせ下さい。
感触の意識改革がポイント。
ダイバーシティ推進の一歩目として女性活躍をスタートした当初は、男性従業員から「ダイバーシティは女性優遇」「女性に対する評価が甘くなる」「女性が昇格しやすい」などの声が上がりました。とはいえ、管理職全体の10%しか女性がいないわけですから、女性が働きやすい環境であるとは言えません。女性が働きやすい会社になれば、男性にとっても働きやすい会社になります。そのことを全従業員に理解してもらうために、管理職の意識改革から始めました。
社長が「会社の経営戦略として取り組む」といった強いメッセージを発信するとともに、自ら休暇を取得するなどしてワーク・ライフ・バランスを意識した働き方をしているため、40代、50代の中間管理職も動いています。このように、上のポジションにいる者が動かないことには、組織全体に浸透していくはずがありません。部長・店長以上を対象とした管理職向けセミナーを3年連続で実施していますし、昇格したばかりの課長や主任、店長などを対象としたセミナーも毎年必ず行うようにしており、その機会を利用して、当社にダイバーシティ経営が進める目的を従業員に説明し、浸透させています。おかげさまで、イオングループ内のダイバーシティ推進企業を表彰する“ダイ満足”アワードでは、2016年、「ダイバーシティ推進企業賞」を受賞することができました。
今後のビジョン
イオン九州(株)の、今後のビジョンをお聞かせ下さい。
誰でも、あきらめず働き続けられる会社
今後は現在進めているジェンダーから、ダイバーシティの意識をさらに進化させ、性別、学歴、国籍、年齢に関係なく皆が活躍できる職場環境を実現していきたいと考えています。個の力を高め、組織力を強くして、「現場が活き活きする」それがダイバーシティ経営の姿です。その第1フェーズである2016年度までは、ダイバーシティ推進の目的の浸透を目標に、その重要性を管理職に理解してもらう活動に取り組んできました。次のステップである2017年度からは、全従業員がダイバーシティを理解して実践できるように「業務改善プロジェクト」「テレワークプロジェクト」「長時間労働削減プロジェクト」「イクメンプロジェクト」の4つの問題解決型プロジェクトに取り組んでいます。すべてが働き方改革につながっていることなので、リンクしたテーマを選びながら活動を続けていきたいと思います。
これらのプロジェクト活動では、活動を通じた人材育成も考慮した人選を行っています。メンバーは通常業務をしながらプロジェクトに携わっていくことになるので、今まで以上に仕事の効率化を図る必要があります。また、今まで関わりのなかったメンバーと関わっていくため、社内ネットワークの構築にもつながります。人事教育部長とダイバーシティ推進室長を兼任していることによってスピーディに物事が進展し、人材育成とダイバーシティ推進に良い相乗効果が生まれていると実感しています。
ダイバーシティ経営がうまく浸透し、近い将来「ダイバーシティ」と付く言葉や組織が日本の中から無くなることが、私たちの理想ではないでしょうか。このような言葉や組織があること自体、ダイバーシティ経営がまだ浸透していない証拠です。イオングループ内で「ダイバーシティ経営」が当然のこととして認識され、そのようなものが昔あったよねと語られる日が来るまで、推進活動を続けていきたいと思います。